プロの住宅レシピ 空を捕まえる断面──山の先へ視線をひらく逗子の家
田邉 雄之
神奈川県逗子市、駅から徒歩10分ほどの山間に建つLL Houseは夫婦と子ども1人のための住まい。都心へのアクセスと自然環境のバランスを求め決められたこの土地は、南側には山が迫り冬季は日照が得にくいという条件もありました。
設計の出発点となったのは「戸建てだからこそ、高さ方向の豊かさを日常に取り込みたい」という考え方。均一な天井高とワンフロアで完結するマンション的な空間構成ではなく、断面から住まいを捉え直すことで、空とつながる立体的な暮らしを目指しているのです。
南側の壁面は山とは反対方向へと傾けられ、視線と光を山の上に広がる空へ導きます。建物は東西方向に同じ断面を持ちながら高さをずらして構成されています。
2階のメイン空間を東側に配置し、西側よりも高く設定することで、周囲からの光を効率的に取り込むと同時に、用途に応じた居場所を生み出しています。スキップフロアのようでありながら明確な階分けをしない構成は、平面・断面の双方に広がりをもつシークエンスをつくり出しているのです。
1階は土間空間を中心にシーカヤックやギターといった趣味の道具を受け止める場に。蓄熱層を兼ねたコンクリート床には床暖涼房が組み込まれ、冬には暖められた空気が吹き抜けを通って2階へと巡ります。開閉可能なハイサイドライトとシーリングファンが空気の上下動を助け住まい全体の環境を整えています。
LDKを明確に区切らず、窪みや段差によって生まれる複数の居場所。友人を招けば、階段がステージや客席のように使われることもあるそうです。動線でありながら滞在を促すスケールの空間が、家族の成長や暮らしの変化を柔軟に受け止めていく住まいです。