プロの住宅レシピ 夫婦の「好き」を暮らしの中心に据えた住まい
「夫婦二人で、どんな暮らしがしたいか」という問いから始まった住まいづくり。
料理が好きな奥様と、日曜大工が趣味の旦那様。二人の“好き”を軸に、無理なく暮らしを楽しむことが夫婦の共通の希望でした。
敷地は、都市部によく見られる間口が狭く、南北方向に奥行きのある形状。建物を北寄りに配置し、南側を大きく開くことで南側には光が入りますが、中心や北側はどうしても暗くなりがちです。そこで中庭型の住宅を採用し、住まい全体に光と風が通る計画としました。
「いつか小さな小料理屋でも開けたらいいね」という会話をきっかけに、将来いつでもお店として使えるようなLDKを検討しました。玄関を開けると正面にはキッチンカウンターがあり、奥様がカウンター越しにお客様を迎え入れます。
キッチンの床は一段下げることで、 正面に座って食事をする人と目線が高さが合い自然と会話が生まれます。
キッチンは、奥様に合わせて特注した業務用仕様。ご主人が収集した杉の一枚板を天板にしたカウンターは、厚みの部分がふわりと浮いて見えるデザインで、杉の重厚感とステンレスの軽やかさが調和した仕上がりに。
住まいでありながら、必要になればお店としても使えるデザインです。
キッチン横に設けた一段高い小上がりの畳空間は、料理の合間に少し腰を下ろし、会話を楽しむための居場所でもあります。吹き抜け越しに雲の流れを眺めたり、星を見つけたりと、日常の中にささやかな豊かさをもたらしてくれます。こうしたひと息つける場所があることで、キッチンでの時間がより心地よく、楽しいものになります。
一方、ご主人の趣味である日曜大工のために、玄関まわりにも工夫を凝らしました。
アプローチの路地から玄関土間までを一体的に考え、室内外をまたいで使えるスペースに。玄関の小上がりの下部には大容量の収納を確保し、日曜大工の資材や道具をまとめてしまえる実用的な資材置き場としました。
実用性とデザイン性を大切にながら、夫婦の「好き」が重なり合って生まれた住まいです。
Photo: 上田宏