プロの住宅レシピ 光を絞り、印象的に取り込む。変形敷地の上質なLDK
住宅に囲まれた80㎡に満たない変形敷地。敷地の個性的な形と、建物の奥に行くほど暗くなるネガティブな要素を、あえて住まいに活かす計画としました。
お施主様は、茶室の光窓や洞窟に射す光など、深い陰影の中で印象的に感じられる光が好みでした。そこで、光が重なることで表情が豊かになる素材と、お施主様が選ばれた照明を軸に、住まいづくりを行いました。
打ち合わせの段階で、前面道路にある青白い街灯の眩しさを気にされていました。当初はリビングに四角い窓を検討していましたが、光へのこだわりや、積極的に開きたい環境ではないことから、街灯の方向へ大胆に絞り込む弓なりの光窓を採用。窓からの光を照明のリフレクターのようにやわらかく反射させて室内に取り込む構成としました。合わせて天井が曲線を描くことで天井面が広がり、空間に伸びやかさが生まれます。
壁には、白とグレーを調合したスペイン漆喰「エスタコウォール」を用い、3色に塗り分けています。最も光が当たる面は白、奥へ向かうほどグレーから濃いグレーへと変えることで、明暗のコントラストが強調され、実際の面積以上に広がりが生まれ、奥へと吸い込まれるような印象になります。
他にも、光が当たると素材の質感が際立つ塗り壁や、波打つような“なぐり仕上げ”のフローリングを要所に採用。あえて光を絞り込むことで素材の質感や陰影が立体的に見えるようにしました。
デザインを大切にしながら、機能性やコスト面にも配慮しています。耐震性や環境性能を高め、長期優良住宅を取得しました。交通量の多い前面道路や、近隣空港の離着陸音にも配慮し、高気密施工によって防音性も確保しています。
また、閉じた住まいでは換気計画が重要です。そこでダクト式の第一種換気システムを採用しました。天井懐が一様に厚くなって圧迫感が生まれないよう、天井の弓なりの根元部分にダクトを通すことで、天井を薄く抑え、空間のプロポーションにも配慮しています。
敷地形状や周辺環境のネガティブな要素に対して対策するのではなく、デザインへと昇華させる。「対策」に見せない必然性のある形に落とし込むことで、気がかりな要素は住まいの魅力へと変わりました。
Photo:中土居宏紀