プロの住宅レシピ 「傾いたドーナツの穴」で叶えた、明るくつながる二世帯住宅

アトリエハコ建築設計事務所
七島幸之

Photo : 澤崎信孝

住まい全体は広場のように緩やかにつながる。

床の高さの変化で生まれた隙間や、光窓により外部の視線を気にせず光を取り込むことができる。

ドーナツ状に設けた多いな吹き抜けで二世帯がつながる。

吹き抜けから望む2階の子世帯の部屋/2階子世帯から望む1階の親世帯のキッチン

変形扇形の32.10坪の敷地に建つ、7人家族の二世帯住宅。
約35坪という限られた敷地に、7人が暮らすための、敷地に対して最大限のボリュームを確保したうえで、その内部をどのように構成するかを検討しました。
「一緒に住むことがとても楽しみ」というご家族の声を反映し、声が聞こえる距離にいながら、お互いの暮らしを尊重できる住まいを検討。一階に親世帯、二階に子世帯の住まいを設け、吹き抜けを通して両世帯が会話できる距離感がもたらす家族のつながりと安心感をめざしました。

周囲は建物が立て込んだ環境のため、プライバシーを守りながら光を取り入れることが課題でした。
そこでまず考えたのが、ドーナツ状の空間構成です。
建物中央に空洞のような吹き抜けを設け、内側に光を取り込めば、外部環境の影響を受けにくい住まいができそうです。しかし、単純なドーナツ型の平面そのままでは光や風が入りにくく、視線の抜けも生まにくそう。そこで、敷地環境や光に合わせて吹き抜けの形を変形させ、光や風の通り道となる窓や隙間を設けることとしました。
ドーナツの穴を傾ける発想で、子世帯のリビングの床を半階上げて隙間をつくり、自然光の通り道となる「斜めヴォイド」を提案。南側の大窓より光が隙間を通って一階へと届き、広がりと明るさが感じられます。

リビング、ダイニング、キッチンなど用途ごとに明確に仕切らず、広場のように連続する空間とすることで、住まいの中にさまざまな居場所を設けています。
例えば階段まわりは、右側が階段、左側がベンチのように腰掛けられる段になっています。図書スペースのように使われていて、ダイニングからそのままごろりと寝転びながら過ごすこともできます。
家族の居場所が細かくレベルを変えスキップでつながることで、何重にも回遊するような楽しい空間となっています。

お施主様とお話しした際に、「この地域も昔はもっと大らかな場所だった。建物が立て込み、遠くまで見渡せた景色や視線の抜けがなくなってしまった」という言葉がとても印象的でした。
特に二世帯住宅では、プライバシーを守ろうとすると空間が閉じてしまいがちです。細かな工夫を積み重ねることで、昔の大らかさを感じられるような住まいとなりました。

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