プロの住宅レシピ 不利な立地条件を魅力に 中庭の土間玄関
樋口章
『春風の家』は周囲を隣家に囲まれた旗竿地で、外光を採りこむには、やや不利な条件の立地でした。そこで、この課題を解決するだけでなく、この家の魅力の一部に転換できるように考えたのが、光の集まる中庭とそこに面したガラス張りの土間玄関です。
いかにもな玄関スペースではなく、一階の居室前に土間を設けて、中庭との間をガラスで区切りました。内と外にタイルの床などの連続性を持たせ、屋外の延長のような玄関、屋内の延長のような庭に仕上げています。
この土地の採光の要である南東に配した中庭から、1階は玄関、2階は大開口の窓を通して光が降り注ぎ、家中に自然光を行き渡らせることが可能になりました。
また、気候が良い頃には玄関を開け放っておけるよう、造作のガラス引き戸の木枠にアコーディオン網戸を仕込んであります。使用しない時には枠の中に隠れるよう設計しました。2階の窓も同じく木枠の中に、こちらはロールスクリーンタイプの網戸が隠れるように設計しています。
このような工夫により、住宅密集地でもプライバシーを守りながらも明るく開放的という魅力ある家になりました。
PHOTO: 平井 美行