プロの住宅レシピ L型住居の中心点 場面を展開していく階段
武田 幸司
『SGH 丘陵地に浮かぶ屋根』の敷地はもともとひな壇のような高低差がありました。無理にすべてを平らにするよりも、建物の中に高低差を引き込み、スキップフロアのように展開していく家にすることで土地のもつ魅力が活かされると思い、プランニングしました。
その中で、肝ともいえるのが家の中心部に設けた緩やかな螺旋階段です。庭の植栽を囲むようにL型に配した建物の、2方向の付け根にあたる部分にこの階段はあります。段差を昇る、降りるごとに、ワークスペースやリビングなど違う空間が展開し、窓の外には庭からテラスへと旋回しながら景色が開けていきます。
家の中心部にあることで、どちらの方向の空間にも移動しやすく、階段が家や庭を集めてくるような感覚になります。
また、ただの通路ではなくそれ自体が居場所になるように通常の倍近く幅広のゆとりある設計をしており、段差に腰掛けて座ったり、上階ではリビングの小上がりのように過ごせる空間になっています。高低差が激しすぎると逆に生活しにくくなってしまうこともあるので、住みやすさにつながる段差を見極めることも必要でした。
庭に面した明るい階段の窓辺は猫の居場所にもなっています。
PHOTO:小関克郎