プロの住宅レシピ 光と目線が抜ける大屋根の開口 ~建蔽率と敷地の有効活用~
川本達也
この住宅は前面が私道(この道路に接する複数の住宅で所有する生活道路)で、不特定多数の人が多く行き交うような場所ではありません。そこで外部と断絶するのではなく、敷地を目いっぱい有効活用しつつ、この道路、そして道路に接する家々のコミュニティに緩やかにつながるようなプランにしたい、と考えました。施主の方からも開放的な空間という要望があり、プライバシーを守りながら伸びやかに暮らせる空間を目指しました。
1階に設けた大きな開口部は、駐車スペースと前庭がクッションになり外部に対して生活がむき出しにはなりません。さらにそこに大屋根をかけることによって、半戸外のような空間となり住居と道路を緩やかにつないでくれます。ただの外ではなく室内の延長として暮らしの中で使える場所になりました。
また、屋根に設けた開口は採光や通風、室内からの見晴らしといった面だけではなく、建蔽率の条件をクリアする役割も担っています。開口部分は面積に入らないので、有効に使いながら建蔽率の制限内におさめることができました。
先端に支柱を設けずに片側で支える大きな軒先に開口部を設けることは、構造上難しく試行錯誤が必要でしたが、この家にとって重要なポイントになったと思います。
PHOTO: 植村崇史