プロの住宅レシピ 細長い家の形を効率的に使う 階段周りに集約された収納と就寝スペース

田中郁恵設計室
田中郁恵
床材

段差の一段目が把手となり、手前に開く収納。天板部分も蓋を開けると、コンセント完備のサイドテーブルの役目を果たす収納になる。ベッド下も収納スペースで容量は十分。

目線が抜ける階段なので空間に閉塞感を与えない。寝室、収納、階段、様々な要素が集結した1Fスペース。

階段下スペースには大きなものを収納できる。木の柱は階段の下2段を支える役割と段差を昇る手がかりを担っている。現在は下部に麻紐を巻いて猫の爪とぎとしても活躍。

フローリング

明るい光の射す2階と階段下の様子。1階の収納兼階段の登り口とベッド部分が見える。

外観。間口3mほどだが南側は幅の広い道路、北側は公園に面していて開放感は得られる立地。細長い形の敷地で効率的に豊かに暮らす。

おひとりと猫1匹のための住まいです。南北が幅の広い道路と公園に面しており、光と風が抜ける環境です。しかし細長く、広くはない敷地でしたので、効率的に空間を使う必要がありました。
その中でも特徴的なのが1階の階段周りのスペースです。
まず、造り付けソファのように見えるのは、既製のマットレスを使えるサイズのベッドです。いかにもベッドという雰囲気のものがあると、寝室として空間の性質を限定してしまうため、ソファベッドのようなものをという施主の方の希望を受けて設計しました。
さらに、ベッド横の段差の天面の蓋を開けると中はコンセント完備の収納になっています。浅めの造りで、就寝時にスマートフォンを置いておくなどサイドテーブルのように使えます。
そして階段下、ベッド下は収納として活用しています。収納は多い方が良いと思われがちですが、その分生活スペースを圧迫し、費用もかかります。私は、施主の方の荷物を図面に落とし込み、本当に必要な収納はどれくらいかを一緒に見極めていくという方法をとっています。
このように様々な役割を1階の階段周りに集約させて、明るい2階をのびのびと過ごせる空間としました。

PHOTO: 中山保寛

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採用されている製品

田中郁恵設計室
田中郁恵
ここが私の評価ポイント!
■採用製品:Pタイル classic

『小径のすまい』の1階に採用したビニル床タイルです。施主の方は最初土間続きのようなモルタル仕上げをイメージされていたのですが、湿式工法(※注1)は乾式工法(※注2)に比べかなりコストがかかります。そこでコスト面も抑えられ、足元のひんやり感も軽減できるPタイルを採用しました。このお住まいには猫もいますので、モルタルよりも汚れが染みになりにくく清掃しやすい素材である点もポイントでした。 また施工時に工務店の方がタイルを貼る向きを工夫して下さいました。通常はタイルの模様の向きを市松に配置して貼るのですが、そうするとタイル感が強調されてしまいます。そこで模様の向きを揃えてひとつながりに見えるように貼ることを提案して下さり、よりすっきりした仕上がりになりました。

※湿式工法:モルタルなど水分を含むものを下地にして仕上げる工法。
※乾式工法:接着剤を用いてベニヤやボード等を下地にして仕上げる工法。
採用製品
無垢フローリング 複合フローリング|IOC (アイオーシー)
アイオーシー株式会社
田中郁恵設計室
田中郁恵
ここが私の評価ポイント!
■採用製品:オーク20マットコート(UV塗装)

普段は、塗膜性の塗料を使用したフローリングはあまり選択せず、クリアオイル塗装など自然素材仕上げのものが好みです。ですが、『小径のすまい』では、猫がいるので、清掃性が良いというのも大事なポイントでした。飼い主の外出中に汚して時間が経ってしまっても染みになりにくいタイプで風合いの良いものを探してこの製品を採用しました。IOCさんのUVマットコートは表面の風合いに嫌みがなく、人工的な塗膜感を強く感じることもない点が魅力です。
採用製品
田中郁恵設計室
田中郁恵

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