プロの住宅レシピ 珪砂を塗料にプラス、手仕事の風合いを感じる壁塗装
橋野文
手仕事の風合いが活きた左官壁はとても魅力的ですが、予算面で左官工事を行うのが難しい場合があります。そこで塗装を選択するのですが、ノペッとした質感になるのは望ましくないので塗料に珪砂(けいしゃ)を混ぜるという手法をよく行っています。これは最初は塗装屋さんと話をする中で生まれたアイデアでした。珪砂とは石英を成分とする砂の一種で、建材や研磨などにも使われているものです。これを塗料に混ぜこんで塗ると、珪砂の粒が入ることで変化が出て、壁面に光の陰影が生まれます。写真1枚目のトップライトから差し込んだ光に照らされている壁にもその風合いが見てとれるかと思います。既製の珪砂入り塗料も存在していますが、価格が高めなのと調色や粒子のサイズなども後から入れる方が自由度が高いと思います。限られた予算内でも、工夫を凝らしながら理想に近づけることは建築家との家づくりならではの楽しさと言えるのではないでしょうか。
PHOTO: YUNAGI MIKI