プロの住宅レシピ 開放的で居心地の良いリビングのような浴室
茂木 哲
築40年の集合住宅の1階をリノベーションした住まいです。改修前の間取りは現在の水回りの考え方とは異なり、狭く薄暗い雰囲気の場所になっていました。
そこでリノベーションにあたり、水回りの位置を変更し、私自身が大好きな場所でもある浴室を居室や庭と連続する開放的な空間として設計しました。
これには配管の位置の変更が必要なので、水漏れのリスクなどを考えると難しいケースもありますが、今回は1階であったため実現することができました。
浴室は壁で囲うのではなく、隣接する和室と連なる一体空間としてとらえています。リビングのように天井や壁、床を仕上げ、浴槽をソファのようにくつろぐ場所として設置しました。オープンな浴室というと湿気やカビの発生が気になるところですが、湯気が立ち込める原因の多くはシャワーであり、カビの主な原因は石鹸カスなどの汚れです。そこで、シャワーブースを隣に設けることでそれらの問題をクリアしました。浴槽はくつろぐ場所であって、洗い場と一緒である必要はありません。浴槽から昇る湯気程度の湿度は、閉め切っていないので室内空間に均一に分散し解消されます。
これらの工夫により、庭を眺められる居心地のよいリビングのような浴室が生まれました。
PHOTO: 山内紀人 / 森山祐子