プロの住宅レシピ 視線をかわしながら広がりを感じる 屋内借景の開口とフレーム
神谷幸治
『□house』は北海道の住宅で、大きな住宅の多い道内にしては小ぶりな建物です。その一方で施主の方は、それぞれの部屋は分けたいというご要望をお持ちでした。しかし、そのまま分けると各部屋の面積は狭くなってしまいます。
そこで閉塞感が生まれないよう、空間のつながりを意識できるスキップフロアを採用し、随所に室内開口を設けました。
それぞれのフロアは適度に囲まれ視線を躱しつつも、壁で行き止まりではなく開口の先に別フロアが臨めます。開口越しの別フロアが借景のような効果をもち実面積以上の広がりを感じられるように意図しました。
さらに室内の開口部は外部へ向けた窓と統一したデザインのフレームで囲み、外の景色を室内に採りこむ窓、室内の景色をさらに室内で採りこむ窓として、空間同士をつなぐ同じものとして存在させました。
また、この開口にはもう一つ重要な役割があります。それは温熱や空気の通り道です。
寒冷地の住宅なので効率よく暖まることはとても大切なポイントです。この住宅では1階のコンクリート土間に床暖房を採用しており、上に昇る暖気が建物内をめぐるためにも開口とスキップフロアが効果的に働いています。
PHOTO: 佐々木育弥