プロの住宅レシピ 影をデザインする ~空間の質を高めるアール~
大縄 順一
私は空間を設計する中で、影をデザインするということを大切にしています。影により立体感や深みが生まれ空間の質・性格を作り出していくと考えているからです。
それと同時に不要な影がノイズにならないよう消していくということも必要で、自然光の入り方や照明の種類、配置など光について計算してデザインしていきます。また、陰影は光が対象物に当たって生まれる物ですので、対象となる壁や天井などの素材・質感の選び方も影をデザインするうえでの重要なポイントとなります。
そのような光と影の巡り方を考えて、私の設計のほとんどで、壁や天井の2面が接する箇所は角そのままではなく、アールをつけた(角をとって丸くした)ものにするという手法をとっています。
直角(もしくはその近似形)の角では影も光もそこで途絶してしまいますが、丸みを持ったコーナーにすることでそれらが回り込み、柔らかな陰影を生み出すとともに視線や空間をその先へと繋げていくことができます。
また、人の動きを考えたときにも角はぶつかることがある場所で、尖っていると欠け易くなります。そういった意味でもアールをつけることは理に適っています。
細かいようですが大切な部分にこだわることで空間の質、居心地の良さは変わると考えています。
※注1※入隅:(壁や天井など2つの面が出会うところの内側のへこんだ角)
※注2※出隅:(壁や天井など2つの面が出会うところの外側の出っ張った角)