プロの住宅レシピ 機能とデザインを使ったその人のためのバリアフリー

森村厚建築設計事務所
森村厚

住まう人の好みが活きた和風の住宅。車いすが入るゆったりした玄関。写真左の壁面に上下2列のナラ材のガードを取り付けている。車いす操作時にぶつかっても傷が気にならないように設置した。

施設の送迎車など大きめの車も停められる余裕のある駐車場と車いすでも出入りしやすい門。

車いすがそのまま通れるように、玄関の引き戸のレールは埋め込みになっている。玄関土間で屋外用の車いすを降り、屋内用に乗り換える。

LDKにも車いすをガードするナラ材を取りつけている。また、将来的に手すりが必要になった場合に備えて、壁の下地には合板を全面に貼っている。

車いすから乗り移りやすい45㎝の高さに設定した畳の小上がり。写真右奥にはPCコーナーを設け、畳の上を自分で移動して使用できる。

『地の家』は脚が不自由で車いすを使用するご主人の暮らしを考えたバリアフリー住宅です。
バリアフリー住宅というと機能が優先され、デザインや住む人の好みが置き去りになりがちです。
しかし、一口に車いすでの生活と言っても暮らし方や体の状態が異なりますし、住みたい家も人それぞれです。『地の家』は画一的なバリアフリー住宅ではなく、その人のための家づくりということを大切に考えて設計しました。

まずはその当時の住まいや暮らし方、好きな空間など、お話をよく伺いながら把握していきました。
すると、好みは和風住宅、屋外・屋内で車いすを乗り変えるので玄関にスロープは不要、屋内では車いす移動時に足載せやハンドル部分が壁にぶつかって傷がつく場合があることがわかりました。
そこで玄関は車いすが入る広々とした空間の土間スペースにし、幅の広い引き戸のレールを埋め込んで段差を無くし、滑りにくく丈夫な敷瓦を床材に選択しました。
室内の壁にはナラ材のガードを上下2列で設置し、車いすの足元とハンドル部分がぶつかっても傷が気にならないようにしました。上のガードは将来的に手すりを設けた際に手が繰り返し壁に当たることへの対策も兼ねています。他にもLDKの小上がりを通常より高い45cmに設定し、車いすから乗り移りやすくしています。
このような小さな工夫を積み重ね、必要な機能と自分の好みを両立させた家での暮らしを楽しんで頂ければと考えています。

シェアする

採用されている製品

森村厚建築設計事務所
森村厚

他の家づくりのアイデア

プロの住宅レシピ カテゴリ