■ 鉢山町の家
私が20年程前に設計した住宅のオーナー様から、隣の土地が手に入ったので、娘さん一家の為に家を建ててあげたいという依頼が来た。敷地サイズは奥行きは同じで間口がほぼ半分である。そこで、二棟が親子の関係になる様な建物を建てることを考えた。
敷地は閑静な高級住宅街にあり、北側の道路から2m程上がっている。間口が5m程、奥行き17m、プランとしてはかなり難易度の高い条件であった。この敷地条件から当初、南と北側を全開口したチューブの様な構造を考えた。これを可能にするために、計画当初は柱と梁を幅60㎝、厚み30㎝の構造フレームを4本並べた薄肉ラーメン構造で架構することにした。しかし、短辺方向の構造壁を適宜バランス良く配置することにより、壁式構造で成立させる事ができた。
また、建物の間口を広くする目的で、二棟の間のほぼ敷地境界線上に寄せて建てた。その結果、建物の間口を50㎝広くすることができた。その他にも、室内に階段とエレベーターを設けるとプラン的に要求された部屋が確保出来ない為、階段を外階段とし、建築面積から除外してコンパクトなホーム用エレベーターのみで非常時以外は移動するという、かなり思い切った手法を採っている。これにより、広々とした空間を確保することができた。
また、敷地の高低差を利用して地下に車庫を設け、その横に玄関アプローチを設けている。しかし、この狭い間口に大型のSUVを納める車庫は難易度の高い条件であった。
これらの難題をクリアーし、このプロジェクトを完成することができた。
Photo : Yukio Arikawa