■ 本と土間の家
クライアントとは自分のこれまでのつながりを辿って巡り合った、赤い糸で結ばれていたかのようなご縁から始まりました。
ご夫婦とも自分と同年齢、お子様2人の4人家族の住宅です。
クライアントからは、「本」、「本屋」、「不便な子供部屋」というご要望をいただきました。
ご主人が多くの本を所持しており、それを所蔵する本棚と将来的にその本を販売したり閲覧できるような小さな店舗ができるような空間を望んでいました。
奥さまも木の玩具などを多数お持ちだったので、様々な場所に本や玩具があるのが自然なような空間にしていこうと思いました。
アプローチからコンクリートの土間で一体につながる玄関を入ると、さらに土間が広がりそこには吹き抜けまで伸びる木々と壁一面の本棚があります。
外部に庭を作るスペースがないのと、自然に囲まれた空間で過ごすことができたら気持ちが良いなということから計画をしましたが、
実際に植栽スペースは南側に大きな開口部があり、そこから入ってくる風はとても気持ちが良いものとなりました。
ご家族の皆さまもこの土間での生活をとても楽しまれています。
冬場には土間にあるペレットストーブに大きなヤカンや鍋料理を置いて暖をとりながら過ごすことが可能です。
ストーブの熱や南からの日射も入ってくるので土間に熱を蓄えて、冬場でも快適な土間生活が過ごせます。
2階には1階の土間に面して吹き抜けがあり、読書ができるカウンターが設けられています。
この家には各所に本棚となる棚が設けられており、空間によって置く本が分けられており、場所、時間帯で利用範囲が変わっていきます。
また、決して大きな敷地ではないためなるべくコンパクトに、しかし、自分たちの趣味を楽しめる空間はしっかりととれるように子供部屋は極力小さくしました。
ご夫婦とも子供たちはいずれ家を出て独立していくという考えのもと、子供部屋は最低限の大きさで、不便で子供たちも早く家を出たいと思うように(笑)、
2人で4帖程度の大きさとしました。
今後、時間の経過と共にさらに使い方に変化が起こっていくでしょう。
PHOTO: 金田幸三