■ 伏古の屋根裏
札幌市に50年前に新築されたこの住宅は35年程前に一度改修され、それまで一部二階建ての建物から総二階建へと増築されている。
この住宅に住むクライアントはシルクスクリーン印刷業を生業としており総二階となってからは隣地と近接している為、南側でも日の当たりづらい1階全てをシルクスクリーンの作業場として使い2階を主な生活空間としていた。母子の二人暮しになり60坪程ある床面積は生活においても仕事においても広さ的に持て余してきたこと、年齢的な部分もあり二階での生活が不安視されたことから依頼された改修工事である。
計画に於いて1階の生活での明るさをどの様に担保するか、また広すぎる面積をどの様に削るかが焦点となる。残された図面を精査すると当時としては立派な大きさの梁を使用していた事からこれらを活用したい事、また調査時に既存の屋根を確認したところ再利用の場合でも下地からやり直す必要があった事、これらの要因も含め勘案し2階以上を減築し新たに勾配屋根を構築するという結論と至った。
既存の住宅は中心部まで光が入りづらい形であった為屋根からの光が計画上求められた。平面計画上アトリエスペースと住居スペースを分け、その分断する壁を棟としそれぞれの勾配屋根の頂点をずらしできた棟の北側にハイサイドライトを設置した。改めて1階に設置されることになったLDKは大きな気積の一体空間とし、既存の柱や梁は新しい屋根束の補強をを除きそのままの姿で表しの形で残している。改修前の暮らしから、しまい込む形よりかは敢えて見せる形が良いと考え、収納を少なくし柱や梁を拠り所にしながら生活感が空間を彩る形とした。勾配天井も相まってさながら屋根裏空間の様相を呈している。
LDK部分に内包される形で親子の個室を設置した。個室内に存在する形となった既存の階段を上ると屋根裏の中の屋根裏スペースへ出る。屋根裏に上がりLDKを見ると北側ハイサイドから入ってくる天空光は勾配天井に反射させ住宅内部の奥へ光を行き渡らせ既存の柱や梁を照らし、さながら大空間の中に落とし込まれた別の構築物の様にも見える。
屋根裏は英語でatticと表記される「面白いものがいろいろしまってあって、ロマンティンクな郷愁を誘う場所」という意味でもある。
歴史を紡ぎながら雑多な生活感を感じられる。まさに「屋根裏」的な住宅ではないだろうか。
PHOTO: FRASCO吉田昂平