■ 飯塚の平屋 / House in Iizuka
敷地は国道と田畑の広がる集落との間に位置し、交通量が多く時間の流れが速い西側と、穂波川や田畑が広がるのびやかな風景とのギャップが大きい場所にあります。 また敷地周辺には、神社が作り出す森、ボタ山の見える風景、少し離れた箇所には炭鉱時代の巻き上げ機基礎の遺構、そし て、宿場町の名残を残す煙突やレンガの塀など、年月を経て残ってきたシンボリックな風景がみられます。
新たにここに建つ建築も、今後それらのひとつとなり得ることが望ましいと感じました。
白華していくセメント板や黒ずんでいくZAM鋼板、苔むしていくカゴ詰めの割栗石などを外観を構成する素材として選ぶことで時とともに味を出していけるものにしました。
一方、ここに住まう家族は、東京から地元へ移り住み、緩やかな時間の中で過ごすことを望んでいました。 そのため、西側の国道に対しては長い塀のような佇まいを作り、騒音や視線をカットするとともに、東側の庭に向かって開くつくりとしました。
また、家族構成や暮らし方の変化に対しても対応していけるように、2つのボリュームで構成されたシンプルな 構成としつつ、木と鉄骨の混構造(短手方向を鉄骨のラーメンフレームとする)とすることで、内部をがらんどうにできるようにしています。さらに可動式の家具と引き戸により生活に応じて変化できるつくりにしています。
施主の趣向とも相まって、内外ともに全体の素材感をラフなもので構成し、時間の流れとともに味わいを持つような素材 、つくりとすることで、この場所のシンボルのひとつとなるような住まいを目指しました。
PHOTO: Katsumasa Tanaka