建築設計事務所 可児公一植美雪
住所: 神奈川県鎌倉市大船3丁目6番22号米倉ビル103
TEL : 0467-95-0767
E-mail
:office@kaniue.com
URL : http://www.kaniue.com/
住所: 神奈川県鎌倉市大船3丁目6番22号米倉ビル103
TEL : 0467-95-0767
E-mail
:office@kaniue.com
URL : http://www.kaniue.com/
■ MISUZU-K
住宅の中にできるだけ大きな空間を作る。その単純な操作で自然現象のような、当たり前でありコントロールできない何かを取り込めないかと考えた。
施主は夫婦と子供2人。求められたのはミニマルである事、そしてできるだけ外に開かないという事だった。
コストから逆算されたボリューム内で、いかに洗練し、いかに開くかが課題となった。
ボリュームの半分を占める大きな空間は窓辺が明るく、奥には影が生じる。夜は照明が下半を照らし、照明の無い天井には闇が広がる。中空を横断する照明は構造的には梁であり、照明に擬態したC-75×40によって東面の壁厚を薄く維持し軽さ生み出した。軽く、目地割まで完全にコントロールされた室内空間にゆらぎのようにコントロールできない要素が侵入してくる。また、窓から910mm内側に、天井から910mm下がった位置に大きな布を吊るす事で開く事と開かない事とを両立した。
サンルームのような窓と布との隙間は、内部からあるいは外部からの緩衝地帯となり、大きな開口でありながら内部と外部を緩やかに繋ぐ。壁内に収納されたような各室はその擬似的自然環境に開いていく。
それらは決して大きくない住宅の中に深い奥行きを生み出している。
Photo : 中山保寛/中山保寛写真事務所
■ 「大切なものを選んで、残す」低予算で叶えた理想の暮らし方
こちらのお施主様は、当初ハウスメーカーへの依頼を検討していました。しかし予算の制約から実現は難しいということで、ご相談を頂きました。
住まいを作る上で希望と予算の乖離はよくあることです。そんな時は、丁寧にヒアリングを進め、プランニングの前に住む人にとって本当に必要なものを明確にすることから始めます。「家にあることが当たり前」という思い込みを外し、「あってもいいけど、なくてもいいものは作らない」という方針で、今回は話し合いを重ねました。
「あることが当たり前」という思い込みの中に、実は住み手の生活スタイルからみると、必要ではないものもあります。
こちらの住まいの場合、例えば「窓の数」です。一般的には各室に窓を設けますが、予算から逆算すると採光通風のためだけの小さな窓しか設けられません。予算内で、より効果的に窓の機能を増幅させようと、この住まいでは窓を3か所に集約しています。大開口を大きなサッシではなく、一般的なアルミサッシを縦に3枚連続して設けることで、壁一面がガラス張りとなり大開口のような窓を作りながら、大幅なコストカットができます。
空間を仕切る壁や扉の代わりには、カーテンを採用しました。これにより、光や風通しを損なうことなく、空間を自由に使えます。必要に応じて空間を大きく使えたり、プライバシーを確保できたりと、多用途に対応できます。 さらに、床の一部はルーバー状にすることで家全体に光と風が流れ込む設計です。
玄関では、玄関室や高価な玄関扉を設ける代わりに、リビングに接続したサッシ窓を玄関として転用しました。昔の住まいのように、シンプルなサッシ窓を出入り口にすることで、実用的でありながらコストも抑えられます。
この住まいのように、コストと快適さを追求するための丁寧なヒアリングと話し合いで、必要な要素を極限まで圧縮し、多角的な視点から工夫することができます。新築と理想の暮らしを「諦めなくてよかった」と言っていただける住まいとなりました。
Photo : 藤井浩司/TOREAL