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竹本卓也建築研究所

住所: 大阪府豊中市刀根山4丁目5番14号

TEL : 06-7223-3862
E-mail :info@tktka.jp
URL : https://tktka.jp/

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物件

■ 刀根山の家

「9つの階層で緩やかに連なる」

敷地は大阪府豊中市の住宅地。間口5m奥行き15mと東西に細長く、東側隣地と1.4mの高低差がある23坪の小さな土地に建つ。北側隣地境界からの高度斜線制限があり、標準的な階高では2階の天井高さを十分に確保できない。このような、間口、建坪、斜線の制限がある敷地にあっても、家族4人が生活する上で過不足のない家、あきらめない家を目指した。

 

この家は間口3.6m、奥行き12.4mの建築面積に、14の空間と9つの階層を内包している。床面と床面を少ない段差で連ねることにより、相互の距離を近く保ち、一体的でありながらもそれぞれの場所に異なる関係性を表した。緩やかに連なるひと続きの空間は、建物全体があたかも踊り場の体を成し、動的で変化のある印象を与えている。

 

階段室や廊下のない平面計画、気積を活用した重層する断面構成は、狭小ながらも住宅として必要な要素を確保するのに寄与している。また、空間を壁と建具のみで仕切るのではなく、床と天井の高さで断面的に区切ることで、間口の狭さを感じさせない、抜けと透けのある空間を実現した。

 

大小さまざまに形状が異なる開口部は、周囲を建物に囲まれた環境においても十分な明るさと開放感をもたらしている。東の空を切り取る三角形の高窓は、季節や天候の変化を取り込み、日々時間の流れを映し出す。

 

設計要件、与件を周辺環境と照らし合わせ、普遍的な要素として住まいに落とし込む。採光や眺望はもちろんのこと、図面や画面には表れない、空間相互の関係性や、身体的な感覚に焦点を当てる。

 

容易に類例を見つけ出せる時勢だからこそ、目に見える情報を追わず、安易な模倣や部分の寄せ集めにしない。釣り合いの取れた建築のあり方を目指して。

 

Photo :  笹の倉舎 / 笹倉洋平

プロの住宅レシピ

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■ 小さな工夫を積み重ねてつくる、 小さな家の大きなキッチン

「小さいから」といって、住まいの快適さを削ぎ落とすのではなく、必要なものをしっかりと確保しながら、工夫次第で広がりを感じられる空間をつくる。そんな考え方をもとに設計した住まいです。

この住まいでは、キッチンのサイズも決して小さくせず、幅2.6メートルを確保。さらに、背面にはカップボードを設け、たっぷりの収納量も確保しました。特に、冷蔵庫やトイレなどの設備を30センチほど外壁側に張り出すことで、室内の凹凸を減らし、スッキリとした空間に整えています。

キッチンの前には畳のスペースを配置。小さな子どもが床に座って遊んだり、お昼寝したりできる場所があることで、料理をしながらでも近い距離感で見守ることができます。畳の高さがキッチンと近いことで、飲み物やおやつをキッチンからそのまま渡せるのも便利です。距離が近いことで、「包丁や火が危ない」という心配もあるかもしれませんが、すべての危険を先回りして排除するのではなく、暮らしの中で学ぶことも大切だと考えています。キッチンが子どもとの距離が近い空間だからこそ、料理の様子を見せながら、「どう使えば安全なのか」を自然と教えることができます。その視点で捉えると、キッチンと畳スペースの関係性は、単なる利便性だけでなく、家族の成長を育む場にもなると考えています。

小さな住まいだから、「収納が足りない」「設備を小さくするしかない」といった妥協を当たり前にせず、必要なものをしっかり確保しながら、小さな工夫を積み重ねることで、毎日の暮らしを快適にし、帰るのが楽しみな住まいになります。
「いい空間で暮らすことは、いい生活の器を手に入れること。」その形の一つがこの住まいです。

Photo : 笹の倉舎 / 笹倉洋平