作品集
■ いすみノ二世帯ノ家
地方移住が落ち着き、高齢となった両親をこちらに呼ぶ事になりました。皆で賃貸暮らしの想定でしたが、父は二世帯住宅を新築する事を決断。半分はモデルルームとも言える自邸の設計ですがコロナからの物価上昇で唯一無二の長期戦でした。
将来性などから増加している完全分離型の二世帯住宅。親世帯が1階、子世帯は外階段を経て2階(仕事場含む)。介護のしやすさに重点をおき両親の寝室まわりから設計開始しました。1階は「寝室⇔リビング」2階は「仕事場⇔生活エリア」の間で南側に一坪の凸部を設け、見える風景が変わることで気分も変わるようにしています。
白地に黒のアクセントのキッチンをショールームで見かけた時、どういう訳か小悪魔的に心惹かれるものがあって家全体のイメージが湧きました。あまり好みではなかったモノトーンがデザインの鍵に。内観は柔らかい光の中、無垢の木材を際立つように白でまとめています。
耐震性/両親の故郷は大地震の被害が大きかった事もあり長期的に高い耐震性を維持できる構造としました。間取りが左右するので案ごとに仮計算、決定後に細密な構造計算を実施。(許容応力度計算による耐震等級3。未申請により相当。)
高気密高断熱/寒がりで年のせいか寒暖差が辛くなりつつ、設計者としても快適さを追及すべく省エネ設計を一から学び直しました。設計もさる事ながら最終的には工務店さんのノウハウ技術に全てかかってきます。施工をお願いをしたトコロ建業さんは高い技術力の中で特に高気密高断熱施工は全国トップクラス。二世帯で外に貫通する配管の量は2倍、天窓や木製建具等の難所があるにも関わらずC値(家の隙間)は0.26と驚異的な数値でした。
遮音/上下階で分かれる二世帯住宅は遮音に気を配ります。夫婦ケンカも筒抜けでは困るので床材の下に遮音用石膏ボードを採用。これが費用対効果としては高いのですが、1階天井のボードと合わせての効果なので天井に多数の穴を開けると効果が半減。天井に大きな穴が開くダウンライトを採用しない等の工夫が肝で効果は抜群でした。
収納/住宅設計では収納計画が大きく快適性を左右します。それは長く住んで良し悪しを実感するものです。収納は多ければ良い訳ではなく、適材適所に丁度良いサイズが散りばめられている事が重要です。モノは生活を支え、収納が上手く行くとモノを大切し生活の質も向上します。建築は人とモノを引き立たせる為に控えめにあるような感覚を持つと設計が上手く行きます。
照明/古き日本家屋は壁の中に空間がなくリフォーム時、配線に悩みます。昔の碍子引きや鉄管など皆さん工夫をしています。今回はペンダント照明のコードをわざと長くし、コンセントから形を描き配線する照明を作りました。コンセント以降の照明器具は資格が無くても自作できますが、コードは曲がりの負荷に強いものを選ぶべきです。
外観/母の要望はつなぎ目の無い白い塗り壁。予算・工期的に厳しく諦めていた頃、大先輩から画期的な工法を教わりました。断熱材(EPS)に直接仕上げていく工法で専門販売施工の多摩建材さんから詳細を教わり、ヒビに強く高寿命でメンテナンス性が良く、結露対策の計算結果も良好で採用。断熱性能もUPし目標をクリア(UA値:0.34)。お薦めできる美しさです。