プロの住宅レシピ 街にも住み手にも優しい、黒の住まい
山田 誠一
こちらの住まいは、周囲の住宅や街並みに溶け込むよう丁寧に設計を行いました。
もともとこの場所には3階建ての大きな建物が建っており、周囲に影を落とし、威圧感を感じる角地でした。この場所に住まいを構えるにあたり、全体の高さを抑えた設計で、周囲に調和し、柔らかく馴染む住まいになるよう心掛けました。こうすることで、周辺の住宅にも日差しが届き、交差点の見通しもよくなり、街の景観にも変化が生まれました。
黒く染めた杉板を縦に揃えて配した外壁は、陰影の中に馴染みます。光沢が出ない質感を生かした黒の塗装で主張しすぎず、落ち着いた佇まいです。内装にはグレーの砂を混ぜた砂漆喰を施し、白ではなく少しグレーがかった左官材は光の加減で表情を変えるので、空間に奥行きを感じさせます。
4面が中央に向かって結ばれたシンプルな形状の寄棟屋根は、その4分の1をカットし、南側に庭を配置。これにより、交差点に面した場所でもプライバシーを守りながら、落ち着いた雰囲気のある庭となりました。
街並みにも住む人にも優しい、落ち着きのある住まいとなりました。
Photo : 川辺 明伸