プロの住宅レシピ 外に閉じて内に開く、曖昧さが生む明るい空間

周辺環境の理由から、外に閉じた家をご希望されることも少なくありません。この住まいも、できるだけ目立たず生活感を感じさせない、外に閉じた住まいをご希望され、この計画がスタートしました。
幸い敷地及び設計条件により本建築と隣地との間を空地とする必要がありました。その空地に面してダイニング・キッチンを設けることで外から内部を伺うことが出来ない大開口とすることができました。
閉じた住まいの中でいかに光を取り込むかを考え、キッチンを窓から離して配置し、生活の中心になるよう設計しました。大開口の横に設けたキッチンはアイランド形式にて製作。これによりキッチンからダイニング、リビングへと空間に余裕が生まれ、広々とした印象になります。
この住まいでは、「開く」と「閉じる」の二元的な考え方ではなく、「開きながら閉じる」という日本特有の曖昧さを大切にしています。例えば、正面から見るとある程度見えるけれど、斜めからは視線が遮られるデザインや、光を通しつつも向こう側の気配をぼんやりと感じられたりと、完全に仕切る壁や扉ではなく、格子状のルーバーを採用しています。
開口の上部に設けたルーバーは、住まいの先にあるマンションからの視線を遮るとともに、室内から不要な景色の目隠しとなります。
大開口に設けた縦型ブラインドが光の明るさと質感を調整し、ブラインドを閉じると窓の十字部分がうっすらと浮かび上がるようで美しく、光が適度に拡散されて室内いっぱいに広がります。
閉じた住まいでありながら、住まいへ一歩入ると全く印象が異なります。
外側からの視線を遮りつつ、内側は明るく開放感に。「閉じた住まい」というテーマに対して追求した一つの形となりました。
Photo : Blitz studio