プロの住宅レシピ 見せつつ隠す 光と風を操る格子
柳瀬真澄
日本の建築は、部屋同士のつながりや内と外のつながりなどを大切にしており、ヨーロッパの建築に比べて良い意味でのルーズさを持っています。開くか閉じるかの2択ではなく、京都の千本格子のように、角度や光の加減によって見えたり見えなかったりという、半分閉じて半分開くような造りが随所に見られます。この良さを現代の住宅にも活かして設計を行っています。
『別府の家』では、建具に格子を採用しています。格子にはガラスを嵌めている箇所と嵌めていない箇所があり、温熱や音の届き方などを考えて選択しています。効率的な空気の流れを考え、格子の一部だけガラスを抜くこともあります。この方法ですとデザインを犠牲にせず空気の抜け道をつくることができます。
『尾ノ上の家』の主室では北庭に連なる階段室側には格子、南庭側にはすだれを仕込んだ建具を採用しています。直接的な視線は遮りながら、自然光や植栽の影の移り変わりを室内で感じられます。
『koto house』の場合は格子の塀を設け、先述の千本格子のように角度や内外の明暗差で適度に視線をかわし、外部に対して閉じつつ開くということを実現しています。
光自体は直接見ることができませんが、ものにあたって影ができることで見えるようになります。格子を用いると太さや隙間の違いで様々な表情を生み出しながら、光や風を感じられます。
PHOTO: Blitz studio