プロの住宅レシピ 使い勝手と美観を両立 庭を臨むキッチン
長谷川順持
『熊本のどまだん Doctor House』の施主はとても食通の方で、ダイニングキッチンを中心に家族が集うので、土間もリビングも庭もダイニングの空気を感じられる空間にしようと考えました。
そこで、料理をつくることがただの作業、キッチンがただの作業場にならないように意識して設計しました。その中でもキッチンの背面に大きな特徴があります。V型の対面キッチンの背面をガラスにし、多くのキッチンに見られる閉塞感を取り払いました。V型のキッチンはスタイリッシュなデザインであるだけでなく、体の向きを変える最小限の左右の動きで作業が可能になる理にかなった構造です。ダイニングキッチン側からはガラスを通して庭が見え、庭にいる家族も屋内の気配を感じられます。キッチンの背面は収納ではなく見せる、そして飾る場所と割り切った構造です。その分パントリーの中に冷蔵庫を含め散らかりやすいものを収納する十分なスペースをとりました。
このように既成概念を取り払ってそれぞれの暮らし方にあった設計を行うことで、住まう人の大切にしていることにしっかりとフォーカスした家を作ることも可能です。