プロの住宅レシピ 階段と家具を一体化 コンパクトなのに広々したLDK

武山 大樹
東京からの移住先として選ばれたこの住まいは、山間の別荘地に建つ一軒家。25坪未満のコンパクトな住まいながら、広がりを感じられる空間を目指して設計しています。
山間地域ではあるものの南側には人通りがあり、北側には交通量の多い大通りがある環境。本来は南側に大きな窓を設けて開放的な景色を楽しみたいところですが、人通りの多さを考慮し、プライバシーを守りながらも自然を取り入れ、心地よく過ごせるよう注力しました。
2階バルコニーの開口部を大きく取ることで、自然光が階段の壁に当たり、1階リビングへと優しい間接光が降り注ぎます。1階リビングから見上げるとバルコニー越しに緑豊かな樹幹が見え、その光景がリビングへ反射することで、自然の温もりを感じる空間となっています。
階段部の壁には明るい色のシナベニアを採用することで、光を柔らかく反射させています。1階のLDKの壁には真っ白ではなく、わずかに緑が入った白の塗料を使用することで、光が反射した際に生まれる影が、周囲の緑と調和します。
この住まいでは階段室を設けず、階段を家具と絡めた一体的なデザインとしました。階段下には収納家具を配置し、テレビや本、小物などが収まります。普段テレビをあまり見ない住まい手のライフスタイルに合わせ、目立たないように工夫しています。
小さな住まいながらも、光と緑、そして家具と建築の一体感のあるデザインにより、限られた空間を最大限に活用しながら、豊かな暮らしを提案しました。