プロの住宅レシピ 吹き抜けを介して共有する明かりと家族の気配

岡村 裕次
何十年にもわたり代々住み続けてきたご家族が、長年親しんだ2階建ての木造住宅を解体し、新たに2世帯住宅へと建て替えました。その2階に設けたのが、子世帯のLDKです。
敷地は南北に細長い形状で、周囲には低層の木造家屋が立ち並ぶ、住宅密集地に位置しています。さらに、斜線制限によって建物の形状が制約されるため、北側への採光確保や構造バランスが課題でした。
限られた面積の中で、できるだけ有効に空間を活用するため、使える部分は最大限に活かしながら、一部を吹き抜けにすることでトップライトからの採光を2階リビングに届けつつ、3階空間との一体感を生み出すことを大切にしました。
まず、1・2階は幅700ミリ程ある門型フレームを等間隔に並べることで、必要な耐震壁量を確保した壁式RC(鉄筋コンクリート造)とし、3階はS造(鉄筋構造)として建物重量を抑え、基礎を杭なし直接基礎としました。門型フレームがトンネル状に連なり奥行きを強調させ、奥へ抜ける視線とともに空間の広がりを感じさせています。
2階と3階の空間は壁で完全に仕切らず、家族の気配が感じられる設計 にしています。現在はお子様が小さいので、どこにいても家族の気配が感じられるよう空間全体につながりを持たせていますが、将来的には板やカーテンで間仕切りを設け、個室に変えられるよう余白を残しています。
柱や梁などのコンクリートの無機質な質感と木の温かみの組み合わせは洗練された印象と、下町ならではの落ち着いた空気感を感じます。住み手の思いやこの町の歴史を反映させた住まいとなりました。