プロの住宅レシピ 室内の安心感と戸外の気持ちよさを併せ持つ「外の部屋」

山縣 洋
「心地いい住まい」と聞くと、まずリビングなどの室内をイメージしがちですが、私が提案したいのは戸外の心地よさが感じられる空間。それもたんなる庭ではなく、室内のような戸外のような「外の部屋」=テラスやデッキ、バルコニーなどです。
壁で囲まれ、大きな庇や屋根をかけた「外の部屋」は、室内と同様に守られている安心感があり、雨や強い日差しを気にすることなくくつろげます。カフェのテラス席のように、自宅でも外の新鮮な空気を感じながら食事やお茶を楽しめれば、日々の暮らしがもっと豊かになるはずです。
たとえば20畳のリビングがほしいと考えているなら、12畳のリビング+8 畳のテラスを検討してみては。テラスとリビングの間はガラスで仕切り、床の高さを揃えてフラットにつなげると、内外の一体感が高まります。
欧米の住宅と違い、日本の住まいにはもともと「縁側」という中間領域がありました。これこそが室内でも戸外でもない「外の部屋」の原型。屋根の下に座って外を眺め、外気にふれる気持ちよさは、四季の豊かな国ならではの感覚なのかもしれません。
このような中間領域を創るためには、自然そのものの景色をうまく取り込むことの他に、計画的な植栽や庭・グリーンの力も大切です。「気持ちいいな」と感じる中間領域には、必ずと言っていいほど緑が覗いているはず。密やかに・時に象徴的に心を和ませる植栽が住まいの景色をより上質なものにします。住まいというと室内や内装にばかり予算の重きを割きがちですが、こういう場所こそ大切につくる家づくりに、年々良さを募らせています。
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