プロの住宅レシピ 住宅街における のびやかな私的空間

border design architects
鳥居信貴
インターフォン

中心がリビング棟。左右の隣家から守るように玄関から向かって左側が水廻り棟、右側にキッチン棟でサンドイッチされている。

黒板ペイント塗料

東西の空間にアクセスする境界をつなぐのは、優しいアーチの入口たち。黒板の壁の左右のわずかな抜けが実際以上に奥行を感じさせてくれる。

玄関を背にリビング側から南の窓側をみた空間。

トイレホルダー タイル

アーチ向こうの空間は、リビングよりも少しだけトーンの明るい白を使うことで、空間を広く奥行きのあるものに見せる効果を産んでいる。生活する中で無意識に視線が伸びるトーンのグラデーション。

キッチンとリビングの間を扉ではなく、カーテンで仕切ることで境界をグラデーション化。照明の灯りの具合で、柔らかな布越しに雰囲気が様々に変わるのも楽しめる。

隣家が迫る住宅街のなかで、プライバシーを確保しつつ、開放感のある空間をどう実現するか──
その問いに、この住まいは3棟構成という明快な構成で応えた事例。

キッチン棟・リビング棟・水廻り棟を並列に配置することで、真ん中に位置するリビング棟のプライバシーを守るため、東西の隣家との距離を確保しながら、南北には風と光が抜ける快適な動線が設けられている。

中心のリビング・ダイニングは、キッチン棟・水廻り棟、そして上階に包まれ、いわば守られるようにしてつくられた“穏やかな場所”。床や天井の目地が視線を導き、素材の切り替えやアーチの先に見える明るいトーンが、空間に奥行きと広がりをもたらす。玄関へと続く左右の小さな抜けも、空間を視覚的に開放する“余白”として機能する。靴棚は裏側から見るとリビングの象徴的な黒板となり、機能と表情を併せ持つ構成だ。そっとはりめぐらされた“さりげない”設計の妙が息づく。

各所に設けられたアーチの開口は、視線と心理のコントロールに一役買う。 丸みを帯びた曲線は、ただの通路ではなく「くぐる」という動作によって場面が緩やかに切り替わる感覚をつくり、日々の暮らしにリズムを生み出している。

メインのダイニングテーブルに接する大きな黒板は、マグネットボードを用いて造作した。小さな子どもたちが触っても大丈夫なように、自然素材で優しい塗料を選んで塗ったというその壁は、きっと時間とともに絵や写真、あるいは家族同士の伝言板のように呼応するだろう。

細部に宿るそうした工夫こそが、「心地よさは、気づかれないくらい静かにあるべき」という設計思想で、鳥居さんが図面に"見えない線"で引いた、心づかいの1つのカタチ。
都市部における“私的なゆとり”のあり方の1つを、静かに提案する。


写真:植村崇史写真事務所 植村崇史​

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採用されている製品

エクステリア(外構)|株式会社ミラタップ (旧 サンワカンパニー)
株式会社ミラタップ (旧 サンワカンパニー)
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鳥居信貴
ここが私の評価ポイント!
■オスポール

建物における機能を担う製品は、役割さえ果たせばできる限り目立たないでほしいと思っています。オスポールは建物の顔である玄関に取りつきがちなポストとインターホンが内蔵できる機能柱です。非常にシンプルな形状で、カラーもステンレス、マットホワイト、マットブラックの3色があり、どんな家にも目立ちすぎず、そっと機能だけあるような製品であり、とても気に入っています。
採用製品
エコスオーガニック 空気清浄塗料     グリーンエレファント
グリーンエレファント
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鳥居信貴
ここが私の評価ポイント!
■オーガニックチョークボードペイント/ナイトブラック

リビングダイニングと玄関の間に機能面と構造面により壁が必要であると判断しました。ただの壁にしてはもったいないと思い、家族がコミュニケーションを取れる壁になるといいと考え、マグネットボード+黒板にすることを考えました。

お子様がまだ小さく、それでいて活発に活用することを考えると、製品として安全であることを前提とするのは自然な流れでした。またこの製品はカラーバリエーションが豊富にあります。最終的にナイトブラックになりましたが、色選びの際は施主様も僕自身もとてもワクワクしていました。口に入れても問題ないほどに安全で、それでいて色も豊富という製品は設計という立場からするととてもありがたく、提案しやすいものだと思います。
採用製品
オリジナル金物|上手工作所
上手工作所
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■真鍮 トイレットペーパーホルダー+棚板

建具の取手やタオルバー、ペーパーホルダーは空間の中で機能としてなくてはならないものです。そういったものはアクセントとして真鍮を採用することが多いのですが、上手工作所様の商品は素材感としての存在感はあれど、プロダクトとしての存在感を感じないところ、それでいて問題なく機能できるところに魅力を感じています。そういった商品は中々ないので非常に重宝しています。
採用製品
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■LNT-W/874エッグ-F(太目地)

不規則なフォルムがかわいらしいタイルです。小面積でしたが、しっかりと主張がありながら、くどくないデザインで使いやすいタイルだと思いました。今回は黄色系統の目地色にしましたが、色を変えれば様々な表情を見せてくれ、印象が大きく変わると思います。
採用製品
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鳥居信貴

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