プロの住宅レシピ 声が響き、記憶がめぐる──吹き抜けと光が繋ぐ家族の暮らし

nagom
茂木 哲

天井と壁に施した無垢材が光と陰影を柔らかく受け止め、穏やかなひとときを演出。ルーバーには照明やロールスクリーンを美しく納め、デザイン性と機能性を両立。

壁材

壁は縦方向のつながりを意識して上下階にまたがる迫力ある木壁を構成。ダウンライトは存在感を抑え、床・壁・天井の自然な質感に溶け込ませることで空間の完成度を高めている。

DKにゆとりがあるからこそ実現したダウンリビングは空間に奥行きを生み、子どもの遊び場としても穏やかに機能する。カーテンを閉めれば、趣味や作業に集中できるワークスペースがひっそりと佇む。

建具

空間と調和するように造作されたキッチンは生活感を抑えたすっきりとした印象に。白いクォーツストーンの天板は上品な質感でお施主さんのお気に入り。

塀の仕上げ

開口部が控えめな外観は、ボリュームごとに色合いを切り替えることで奥行きと変化を表現。やわらかな光が差し込む玄関は、日々を整えてくれる場所として特別な存在に。

埼玉県川口市の広い敷地の一角に建てられたのは、ご夫婦と2人のお子さんが暮らす木造2階建ての住宅。
「吹き抜けがほしい」「家族の気配を感じられる家」「開放感と一体感」──そんな思いに寄り添いながら、内と外の環境と調和するようにこの住まいは静かに佇んでいます。

中心には南からたっぷりと光を取り込む大きな吹き抜け。1階と2階がゆるやかにつながり、声や光が自然に行き交う環境が日々の暮らしに穏やかな広がりをもたらします。
子どもたちの声が家中に響き渡るような朗らかで伸びやかな住環境です。

大開口から差し込む陽射しに対しては、遮光のためのロールスクリーンやカーテンを巧みに仕込みながら、居心地のよい光環境を調整できる工夫も。住まい全体を「家族の居場所」として捉えたやさしい設計思想が細部にまで貫かれています。

また、キッチンは子どもと一緒に料理をしたいという思いに応えるオープンな設計に。お施主さんの希望で冷蔵庫や電子レンジ、パントリーなどの家電はすっきりと隠されており、生活感をそっと包み込みながら親子の時間が育まれるあたたかな場所となっています。

「人工的すぎず、マットでやさしい質感のものを」──そんな素材感を大切にしていると自然と趣味や感覚の近い方との出会いが重なります。 一つひとつの選択に“手足に馴染む感触”を優先する意識が、空間づくりの軸となって住まいの輪郭をそっとかたちづくっていきます。

自然素材がもたらす柔らかな質感、光に満ちた空間の広がり、そして家族の会話が自然と生まれるような場面。そうした日常の物語が住まい全体を優しく包み込んでいます。
趣味や暮らしの積み重ねが静かに息づく、等身大で美しい住まいです。

Photo:山内紀人、茂木哲

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採用されている製品

コーディネート製品|IOC (アイオーシー)
アイオーシー株式会社
nagom
茂木 哲
ここが私の評価ポイント!
壁材にはアイオーシー株式会社のプラフォンテラス、ホワイトオークを採用。
オークは無印良品の家具にも多く用いられているように、空間に馴染みやすく、他のインテリアとの相性も良い。家具や収納を買い足しても調和がとりやすく、暮らしの中で無理なくコーディネートできる安心感があります。
複合フローリングに強みを持つメーカーで、樹種の幅が広く、設計意図に柔軟に応えてくれます。担当者の対応も丁寧で、親身に相談に乗ってくださるので、細やかな設計にも安心して取り組めます。
15年以上のお付き合いがあり、自宅にも取り入れているほど。質感の高い仕上がりと木目の綺麗さが安定しており、お施主さんにもまず最初にご提案する製品です。
採用製品
メラミン化粧板|アイカ工業
アイカ工業株式会社
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茂木 哲
ここが私の評価ポイント!
家具や建具の扉にはAICAのJWボード プレミアムテクスチャー NEW 10008を採用。
木目に沿って微細な凹凸が施された仕上げは、見た目だけでなく手触りにも自然な質感があり、突板に近い印象を与えてくれます。
ポリ板やメラミンを使用する際は、特別な理由がない限りこのプレミアムシリーズを選択しています。
質感の高さに加えて色柄のバリエーションも豊富で、空間ごとに最適なものが見つけやすく、仕上がりの美しさや対応の早さを含めて、安心して使える製品です。
20年前からカタログが手元にあり、馴染みのある存在で安心感のある定番です。
採用製品
レンガ・タイル|国代耐火工業
株式会社 国代耐火工業所
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茂木 哲
ここが私の評価ポイント!
塀の仕上げには国代耐火工業所の二丁掛ライト セラリ・パースリを採用。
繊細なカッティングが施された表面が、豊かな表情と立体感を生み、引きで見たときの美しさに惹かれて選びました。
タイル一つひとつにわずかな個体差があり、均一すぎない自然な風合いが特徴です。
住宅の顔となるアプローチ部分に用いることで、近づいたときにも印象的な質感が感じられ、外観に確かな存在感を添えています。
人工的な均質さではなく、素材が持つ揺らぎや迫力を大切にしたいという思いがこの素材を選ぶ決め手です。
採用製品
nagom
茂木 哲

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