プロの住宅レシピ 美しさを選び取る暮らし──グレーで統一したスタイリッシュな空間

建築工房DADA
吉田 和人
キッチン

お施主さんの希望でグレーを基調に空間全体を統一。造作カウンターもスタイリッシュなキッチンに馴染むよう設計。中庭の一本の木が奥の寝室の小窓の視線をやわらかく遮り、静かな緊張感を生み出している。

中央には揺らめく演出性の高いアルコールランプ。1階で完結する生活空間の設計に明暗のコントラストが静かに共存する。

壁材

約6mの吹き抜けと間接照明が導く奥行き。中庭からの太陽光も設計操作で調節。統一された空間は見せ場としての完成度も高く、来客時にはよく褒められるそう。

玄関から直結する空間は、ご主人のロードレース用バイクの拠点。収納性と作業性を備えリビングと緩やかにつながる、趣味と日常をシームレスに結ぶ場所。

軒の天井には経年変化する木を用い、グレーとの対比で温もりを演出。吸音性素材を仕込んだガレージは音への配慮も行き届き、暮らしと一体に設計されている。

福島県いわき市。ご夫婦で暮らすこの住宅は、内装に強い関心をもつ奥様の感性が大きく反映されています。キッチンや照明、素材選びにいたるまで、設計者との対話を重ねて決定されました。ご主人は「書斎とガレージさえあればいい」と語り、そのシンプルな視点が空間構成に輪郭を与えています。

空間は、デザイン性と美しさを重視した「グレーで統一したい」という施主の明確な希望を軸に構成。照明計画には明暗のコントラストが効いており、明るく広がるLDKに対し、寝室や水まわりはあえて光を抑えることで、静けさとの対比を生み出しています。

中庭には、寝室の小窓の位置に合わせて一本の木が植えられ、将来的には視線をやわらかく遮る緑のスクリーンとなるよう設計されています。この中庭は屋根付きで、雨天でもBBQなどが楽しめるアクティビティの場にもなっています。ガレージとは直接つながり、動線の中に自然な開放感と豊かさが広がります。

2階からは南東に広がる公園の緑が望め、外との距離感も穏やかに保たれています。吹き抜けの高さや間接照明は、奥様がSNSで見つけた理想のイメージをもとに設計。中庭から室内へと伸びる光のラインを直線で揃えることで、視線の流れに美しい統一感が生まれています。

友人を招いた際には「褒められる空間」として自然に成立する佇まい。お施主さんのパズルのように多彩な希望を、ひとつひとつ丁寧にすり合わせながら、引き立て合うように空間に編み込んでいく。対話を重ねた先に、“好き”が調和した、美意識の住まいがかたちづくられています。

Photo:sakumaru

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採用されている製品

キッチン|GRAFTEKT
株式会社TJMデザイン
建築工房DADA
吉田 和人
ここが私の評価ポイント!
キッチンにはキッチンハウスの「グラフテクト」を採用。
発売初期から注目されていたモデルで色はベトングレーを選択しました。現在は展開色が増えています。当時、テーブルとセットでお手頃価格のプランがあり、空間全体に統一感が生まれました。本物のような質感と意匠を表現できる樹脂製素材(メラミンシート)を使用しており、見た目は非常にスタイリッシュかつシンプル。他社と比較して価格も抑えられていて、海外製の食洗機が導入できる先駆的な既製キッチンとしても話題になりました。デザイン性を重視したいお施主さんにおすすめです。
採用製品
SOLIDO typeF coffee リサイクル内装ボード | 屋内壁
ケイミュー株式会社
建築工房DADA
吉田 和人
ここが私の評価ポイント!
テレビ背面の壁材にはケイミューのSOLIDO typeF coffeeを採用。
人工素材でありながら自然素材のような奥行きのある味わいがあり、あえて色ムラやゆらぎを残したコンクリート打ち放しに似た質感です施工には技術が求められ、人気のある素材ですが、大判ゆえに施工には高い技術が求められ、真っ直ぐ張るのが難しいという一面も。それでも多少の歪みを素材の個性として楽しめれば、この壁材の魅力を存分に引き出せます。
お施主さんと「使ってみたい素材を一緒に探す」という対話のなかで選定されたものであり、こうした挑戦的な素材選びが空間に深みを与えています。
採用製品
建築工房DADA
吉田 和人

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