プロの住宅レシピ 「開く」暮らし方。 家開きをテーマにしたリノベーション

田岡 博之
こちらの住まいのテーマは「家開き」。
以前の住まいは、高い門と塀で囲まれた典型的な庭付き一戸建てでした。数十年が経ち、時代も変わる中で、当時のベストだった住まいから、今の時代のベストに更新するため、「開く」デザインを取り入れました。来客に気軽に泊まってもらえるようなオープンな住まいを目指しています。
このような住まいを実現するため、まずは外構から大きく見直しました。
門扉や塀はすべてを取り払うのではなく、半分を残すことで、なんとなく境界を感じるようにしています。入口は閉じた暗い造りの玄関から、テラスにつながる土間を備えたオープンな入口へと変更しました。
道路から住宅へは、ゆるやかなスロープと、一段ずつ住宅の中へ入っていくようなステップを設けています。こうして段階的につながることで、心地よい距離感が保てると考えています。
室内は、居間やダイニングといった間取りや用途を固定しない設計とし、その時々で柔軟に変化できる構成にしました。キッチンもシェア感覚で使えるオープンなデザインです。
ウッドデッキはフローリングと高さや素材感をそろえ、天井や壁も一部を開放することで、室内から庭、道路へと続くようにデザイン。道路沿いのベンチに腰掛ける人、縁側に座る人、ダイニングでくつろぐ人、キッチンに立つ人…と、まるで屋内外が一体の観客席のような感覚です。
この地域は、長年住む人と新しく住み始めた人が混在しながらも、昔ながらのご近所付き合いが残り、おすそ分けし合うような関係が根付いています。そんな地域性を取り込むことで、住まいでありながら、さまざまな人が出会い、交わり、暮らしを楽しむ場所となっています。
Photo: 太田拓実