プロの住宅レシピ 光の森に暮らす──森にひらかれたアトリエの暮らし

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納谷 新・太田 諭

同地に生えていた杉を使用して仕上げた天井と壁が木質感を強調し、天窓からの自然光が陰影を生む。

中央には薪ストーブを据え、空間全体の熱環境を確保。右の足元の収納空間には薪のストックを置くスペースとして機能し、左にはペット用のゲージが収められている。

斜面地を活かしたステップフロアが生活動線を緩やかに繋ぐ。低い位置に設けた窓はベンチとしても機能し、座ったときの目線から森を切り取る。

ダイニング越しに森を望む構成。柱を白い壁の内に隠す構造により、大空間の抜けを実現している。

アトリエの一角には書棚と作業机を配置。キッチン収納やカウンターには地元杉を用い、天井材と統一。トップライトからの拡散光が木目を照らし、素朴な素材感を際立たせる。

長野の森に佇むこの住まいは、東京から移住した方のために計画されました。日常の中で自然と一体となれる環境を求め、派手さよりも「明るい森に暮らしたい」という思いが出発点となりました。

敷地は豪雪地帯に位置し、除雪車が通れる地形づくりも含めて環境を整備。周辺の木を間伐し、地面まで光が届く健やかな森を整えるところから家づくりは始まったのです。

建築は切妻屋根のシンプルな構成とし、外壁には焼杉を採用。室内は白壁と杉材を中心にまとめ、すっきりと仕上げられています。

特筆すべきは森から伐り出した木を乾燥させて使用した天井材やキッチン。同地の木という地産地消の素材選びが一体感を与え、森と住まいを地続きに感じさせています。

空間構成の特徴は、斜面を活かした階段やステップフロア。大空間を成立させるため柱を壁に収め、連続梁や吹抜けが視線の抜けを演出しています。

窓際はベンチとしても機能し、座ったときの目線で森を楽しむ工夫がなされています。建具の多くをガラス面とすることで、どこにいても緑を感じられる設計です。

暮らしを支える細やかな工夫も随所に込められました。照明は極力なくしてスタンドライトで補い、自然光の移ろいを暮らしに取り込む計画です。

犬や猫と過ごすためのキャットタワーやスペースの工夫も加えられています。リビング中央に据えられた薪ストーブは、冬の厳しさを和らげると同時にあたたかな居場所を生み出しています。

自然のリズムを受け入れ、光や素材とともに暮らす日常。ここには「森と住まいが呼応する心地よい暮らし」のかたちが実現されています。

photo:吉田 誠

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