プロの住宅レシピ 敷地条件を豊かさに変える、スキップフロアの住まい

種昻 哲
細長い形状で二つの道路に面した、さほど広くない敷地。セットバックや斜線制限などの法的条件の中で、限られた空間をいかに豊かに活用するかが求められました。そこで、住まい全体はスキップフロアとし、立体的に空間を使うことで、狭さを感じさせない設計にしています。
暮らしの中心となるLDKは最上階に設けました。斜線制限の影響で高さに制約のある天井は、梁を表しにした勾配天井とし、できる限り高さを確保。限られた条件の中でも、開放感のあるのびやかな空間を作ります。
リビングの左側に設けた長いベンチは、ダイニングチェアやソファのように使えるのはもちろん、昼寝もできるなどフレキシブルな設えです。使い方を限定しないことで、暮らしに合わせて多様に対応できます。ベンチはフレキシブルボードというセメントボードを採用したことで、木造住宅では難しいコンクリートのような質感を実現し、空間にアクセントを与えています。
室内に明るさをもたらすテラスの反対側には、サンルーム兼ゲストルームを配置。来客時には宿泊スペースとしても活用できます。
テラスからリビングダイニング、そしてサンルームまで視線が一直線に抜ける設計により、敷地の端から端まで見通せ、実際の面積以上の広がりを感じられるのも、この住まいの特徴です。
Photo:ToLoLo studio 中村 マユ