プロの住宅レシピ 家族の記憶を映すプール──快適な夏をデザインした上質な住まい

FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
伊原 孝則
木製サッシ

プールはお施主さんの強い希望であり家族の思い出づくりの象徴。敷地で最も日当たりの良い場所に据えつつ、建物配置で適度な日陰を確保。猛暑の季節も一日中ずっと快適に楽しめる設計に。

プール

庭の大部分をプールに充てるように計画。夜は照明を抑え、リビングから水面を眺めて過ごす穏やかなリゾートのような時間が広がります。

壁・天井材

吹き抜けのあるリビングは広幅オークの床があたたかさを添え、大開口からはプールへ視線が伸びる。植栽による将来的な遮蔽計画で外部の視線を和らげ、家族が安心して集える開放的な中心空間。

庭とプールサイドのアクセントとなる白い壁には琉球石灰岩を使用。軒下にレッドシダーを用いて濡れを避けつつ経年変化に配慮し、外壁は吹付けで落ち着きを演出。

家族が同時に使える広々とした洗面とプールから直接つながる浴室。女性の多い暮らしに寄り添い、夏のアクティブな日常を支える快適な水まわり動線が意識されている。

横浜市の閑静な住宅街に建つご夫婦と3人の娘さんの住まい。お施主さんからは「プールのある家にしたい」という強いご要望がありました。 それまで沖縄の奥様の実家近くで長期宿泊して過ごしていた夏の記憶を、日常に取り込みたいという思いが計画の出発点となっています。

プールは庭の大部分を占め、住まいの中心的な存在となっています。配置は敷地で最も日当たりの良い場所を選びながら、建物の形状であえて日陰をつくる構成に。

屋根勾配は南面に最適化し、太陽光パネルの設置効率を高めています。季節を通じて安定した発電量を生み出し、日々の暮らしにそっと寄り添うエネルギーの循環としてこの住まいを支えています。

南面を全面的に開放するのではなく、南国の住まいに倣って強い直射を和らげることで、猛暑の季節でも水温や体感が安定し、一日を通して快適に楽しめる環境を実現しました。 建築自体で日射をコントロールするこの設計は近年の気候に即した工夫ともいえます。

庭の中でとりわけ印象的なのは、プールサイドに佇む琉球石灰岩の白い壁。
奥様の縁の素材を取り入れる意図で選ばれたもので、もともと珊瑚が堆積してできた多孔質の石灰岩です。

磨き方によって高級感から荒々しさまで表情を変える素材で、柔らかな白色がアクセントとして南国らしい開放感を漂わせ、象徴的な意味合いを宿すような存在感を放ちます。

暮らしに即した機能面の工夫も随所にあります。
持ち物の量を事前に考慮して2階全体に匹敵するほどのロフト収納を設け、2階には子ども部屋3室と寝室を配置。 数年の間でも子どもたちが快適に過ごし、やがて巣立っても「帰って来られる家」となることを願った構成です。

洗面室は女性が多いことから広く設計され、鏡も大きく清潔感に溢れた空間に。
そしてプールから直接アクセスできる浴室とともにアクティブな動線が設けられています。

見た目の華やかさ以上に、家族の思いを宿した「夏の家」。
プールに集いながら伸びやかに過ごす時間は、子どもたちにとって帰りたくなる原風景となるように──そんな願いが込められた住まいです。

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採用されている製品

木製サッシ/アイランドプロファイル
株式会社 アイランドプロファイル
FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
伊原 孝則
ここが私の評価ポイント!
木製サッシにはプロファイルウィンドーの「HEBESCHIEBE 引き込み」を採用。
お施主さんの強いご希望であった“大開口”を実現するために選ばれた製品です。 社歴も長く業界で広く知られるメーカーであり、特に大型木製サッシに対応できる限られた存在として信頼性の高さが評価されました。
採用の決め手は、優れた気密性と防火性です。大開口になるほど気密確保が難しくなりますが、この製品は精度の高い金物や特殊なパッキンを用いることで、引き込み式でありながら高い密閉性を実現。都市部の厳しい防火規制やサイズ制限にも対応可能で、快適性と安全性を両立しています。
設計段階から前提としてスタッフの方と検討を重ね、細かな調整を繰り返しながらプランを確立しました。お施主さんと共にショールームを訪れ、動作確認や木の色味の選定を丁寧に行ったプロセスも印象的です。
造作で対応するケースが多い中、コスト面では高額な部類に入りますが、気密性・防火性・大開口を同時に満たせる点は大きな価値といえます。
採用製品
家庭用プール|株式会社日暮ホームプール
株式会社日暮ホームプール
FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
伊原 孝則
ここが私の評価ポイント!
プールには「日暮ホームプール」による完全オーダー製プールを採用。 住まいの象徴ともいえるこのプールはお施主さんの強いご要望を受けて導入されました。
今回が初の採用事例ですが、小規模メーカーながら柔軟に対応し、最後まで丁寧に仕上げてくれました。
工法はシンプルで、穴を掘りパネルを立て込み、シートを張って空気を抜くことで完成する仕組み。大掛かりな工事を必要とせず施工性が高い点が大きなメリットです。
メンテナンスは一般的な循環方式で水質を保ち、汚れや藻の発生を抑制。通常の清掃が必要ですが特別な手間はかかりません。コスト面では比較検討した中で最もお手頃でありながら、フルオーダーで大きさや幅を自由に設定可能。構成するパネルサイズに制約はあるものの、プール全体の計画としては十分な自由度を確保できます。
簡易的な工法でありながら、仕上がりは想像以上に美しく、暮らしの中心にふさわしい存在感を放っています。
採用製品
壁紙|ECO FREECE - エコフリース
株式会社ナガイ
FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
伊原 孝則
ここが私の評価ポイント!
室内の壁仕上げにはナガイの「エコフリース F06 フレンチグレー」を採用。
基本的にクロスの選定において重視しているのは、塗り壁のようにしっとりとしたマットな仕上がりです。一般的なビニールクロスに見られる照明でのてらつきがなく、大きな空間に施工した際にも落ち着いた雰囲気を保てることが大切でした。
空間全体の質感にふさわしい素材を常に探し続ける中で、このクロスが最適解となったのです。 色の選定は、床材やインテリアとのバランスを重視。
真っ白ではなく素材のトーンに寄り添うグレーを選ぶことで、空間に奥行きと一体感をもたらしています。特に広い空間では壁面の色が大きな影響を与えるため、細やかな検討が行われました。
もともと塗装仕上げも候補にありましたが、近年増えている地震や災害による外壁のクラックへの懸念や、コスト面でのバランスを考慮してクロスを選択。
一般的なクロスに比べれば価格はやや高めですが、質感や仕上がりの美しさを考えれば十分に納得できるものです。大手メーカーでもこのような質感をもつ製品は限られており、色数も少ないため、選定の中で特別な存在感を放ちました。サンプル提供が豊富で検討しやすかった点も選定の後押しとなります。
住まい全体を落ち着いた上質なトーンで包み込む質感の良さが際立つ仕上げ材です。
採用製品
FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
伊原 孝則

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