プロの住宅レシピ 素材がつなぐ暮らし──キッチンを中心に猫と過ごすリノベーション
青山 茂生・隅谷 維子
東京23区内のマンションをリノベーションした、50代の女性と2匹の猫のための住まい。もともと2LDKだった間取りは、物置部屋や廊下のため、広さを感じにくいつくりだったそうです。
食を愛し、将来的には料理教室も開きたいというお施主さんの希望から、「キッチンを中心に開かれた空間をつくる」ことがテーマとなりました。本計画はキッチンメーカーのエクレア(EKREA)からのご依頼をきっかけに始まったもの。
文京区にショールームを構える同社とは、以前から設計者との交流があり、対応の丁寧さや施工力への信頼があったといいます。
住まいの中心となるキッチンを起点に、設計と施工を一体で進める協働プロジェクトとして形づくられています。
今回のフルリノベでは廊下や仕切りを撤去し、約62㎡をひとつながりの空間へ。生活機能を左側のモジュールに集約し、水回りや玄関を効率よくまとめています。
LDKと寝室がゆるやかに連続し、キャスター付きの家具によって自由に間取りを変えられる構成です。そして角部屋の利点である二面採光を活かし、視界の抜けを確保しています。
内装には構造体のコンクリートを現しとし、床には大判タイル、壁には木毛セメント板を採用。タモ材のフレームで構成された建具は、ガラスと木パネルを組み合わせ、見せる・隠すのバランスを取っています。
また、配管を隠すための柱には麻縄を巻き、猫が登って遊べる「爪とぎ柱」として活かされています。玄関前には飛び出し防止のためのワンクッション空間を設け、猫との共生をさりげなく支えています。
コンクリートと木の静かな対話の中に、光がゆっくりと広がる。キッチンを中心に食と暮らし、そして猫たちの気配が穏やかに混ざり合う住まいです。