プロの住宅レシピ 擁壁の再構築で生まれた、条件を魅力に変えた外観デザイン

一級建築士事務所ikmo
比護 結子

老朽化した擁壁の再構築は高額なため、大きな課題となっている。敷地や周囲環境を考慮しデザインの力で解決した事例。

雨樋

擁壁の再構築により、街に対しても、暮らしに対しても、コスト面においても三方よしの方法を考えた。

ベンチも兼ねた擁壁と階段は、室内の階段と視覚的につながる。

夕景。地下室の土間と階段状のライブラリーは、街に開かれたスペース。

三方を擁壁で囲まれた高低差のある敷地。周囲は緑が多く、その環境に惹かれてこの土地を購入されたお施主様。
しかし老朽化した擁壁は修繕が必要で、さらに風致地区のためセットバックが求められるなど、建築条件は厳しく、擁壁をすべて作り直すだけでもかなりの費用が必要でした。 「厳しい条件の中でどう建てるか」が最優先事項でした。

この住まいのポイントは、やはり「擁壁の再構築」です。
擁壁をすべて作り直すと、費用が高額になることから、擁壁を段々に小さくしたり、擁壁と地下室の壁を兼ねる構造とすることで擁壁のコストを削減。そして、その上に木造の軽い家を乗せることで、コストを抑えながらお客様のご要望を実現しました。

擁壁の上にただ家を乗せるのではなく、 道路から階段が住宅へとつながる構成で、導かれるようなデザインに。今までは擁壁で囲まれた見通しの悪い道も、この住まいが建ったことで明るくなり、街に対しても雰囲気を良くする存在になっています。
ただ擁壁を設けるというよりも、街に対しても、暮らしに対しても、コスト面においても三方よしの方法を考えたのが、この住まいの最大のこだわりです。
結果として、必然的にスキップフロアの構成が生まれたのも、この住まいの大きな特徴です。

近年、古い擁壁の崩落などのニュースを目にする機会も増えました。高度経済成長期に一斉に作られた擁壁が、今まさに劣化期を迎えています。老朽化した擁壁や費用面の問題から、ハードルが高い土地も擁壁を工夫して活かす設計によって、建て替えへのハードルを下げることができた事例でもあります。今後、同じような問題に直面する方も多くなるかもしれません。そうした土地の可能性を見直すきっかけになった住まいです。ネガティブに捉えられがちな土地条件を、ポジティブに変えていく設計の発想がこの住まいづくりの軸となっています。

Photo : 西川 公朗

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採用されている製品

雨とい|株式会社タニタハウジングウェア
株式会社タニタハウジングウェア
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ここが私の評価ポイント!
シンプルな形状でガルバリウム鋼板の外壁とも合うため採用しました。 外観に違和感なく仕上がり、全体のデザインに自然に溶け込みました。竪樋への落とし口がすっきりと納まっているので、細部まで美しい印象を与えてくれます。 既製品で軒先をすっきりと納めたい場所や、シンプルで調和の取れた外観を求める方におすすめできる製品です。
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