プロの住宅レシピ 「機能」と「暮らしやすさ」をデザインに変えた、終の棲家

タカセモトヒデ建築設計
高瀬 元秀

視力が弱くなっても「今どこにいるか」が把握しやすいよう、壁を左右非対称に設計。

住まいの特徴でもある寄棟屋根。変形敷地を活かした形がとなっている。

6センチの細い梁を採用することで、空間を軽やかでリズミカルな印象に。

夜の雰囲気。

ご夫婦が終の棲家として、将来を見据え丁寧に向き合いながら建てられた平屋の住まい。
長く住んだ二階建ての住まいを子世帯に譲り、同じ敷地内に新たな平屋を建設しました。
敷地は三角形に近い変形地で、矩形で作るのは難しいため、敷地の形をそのまま住まいの形に反映しました。変形敷地に沿った寄棟屋根はこの住まいの特徴のひとつです。

ご高齢のお施主様は視力が低下し始めており、車椅子利用も想定した住まいづくりが求められました。車椅子でもスムーズに移動できるよう、廊下は広く取ってゆとりをもたせ、角の負担が軽減できるよう丸みのあるデザインに。
また、視力が弱くなった際にも「今どこにいるか」が把握しやすいよう、壁を左右非対称に設計。手を添えて歩いたとき、壁の形の違いによって方向が分かるようにしています。
暮らしやすさや機能を重視しながらも、高齢者対応を感じさせないデザインは、この住まいの大きな魅力です。

リビング周りの細々した収納、テレビボード、ペットスペースなど、家具のほとんどは造り付けとし、埋め込み式収納を採用。これも車椅子の生活で、動線を妨げないための配慮です。
天井には、変形敷地に沿う寄棟屋根の構造をそのまま現しとしています。
通常は10.5センチほどの梁を使うところ、ここではあえて6センチの細い梁を採用することで、空間を軽やかでリズミカルな印象に仕上げました。複雑な屋根形状を「見せる美しさ」として活かしています。
建物中央が暗くなりがちな平屋も、住まいの中心にトップライトを設け、落ちてくる光をゆるやかな曲面の壁で受け止めることで、やさしい光が空間全体に広がるよう工夫しました。
「光の明るさを最後まで感じてほしい」という想いから、光が生活の安心につながるよう設計しています。
ヨーロッパの建築や教会に見られるような、光が上へと向かう美しさを意識した住まいで、お施主様に寄り添う、穏やかでやさしい住まいとなりました。

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高瀬 元秀

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