プロの住宅レシピ 人を招き、静かに寛ぐ── 箱根・仙石原の温泉別荘
箱根・仙石原。都心からのアクセスも良く、豊かな自然に包まれたこの地に建つのは個人宅として計画された温泉付きの別荘です。お施主さんが安心して過ごせるよう、建物は階段のない平屋建てとしました。
近隣のゴルフ場で友人と過ごした後、そのまま泊まり、温泉に浸かって寛ぐ──そんな滞在型の使い方が住まいの前提として据えられています。
敷地条件を活かし、建物は敷地の中央に配置。外部と目線が合いにくいため、カーテンに頼らずともプライバシーが保たれ、日常は庭の緑をそのまま取り込む暮らしが可能となります。内部はリビング、ダイニング、キッチンを緩やかにつないだワンルーム構成。行き止まりのない回遊動線が、滞在中の動きを自然に受け止めます。
リビングの中心には薪ストーブを据え、空間の重心を明確に設定。炎を囲むように人が集まり、暖とともに時間を共有する場として機能しています。床や壁、家具にはオーク材を用い、素材感を揃えることで、大きな平屋でありながら落ち着きのあるスケール感を保っています。
ダイニングとキッチンは特注のオーク材キッチンを中心に一体的に計画。木目の流れや高さを揃えることで作業と食事の場が分断されず、日常動作が穏やかに繋がります。家具にはお施主さん持ち込みのヴィンテージチェアも取り入れ、空間にさりげない奥行きを与えています。
温泉を備えた洗面・浴室まわりには、一枚物の造作の洗面台と三面鏡を採用。入浴後に腰掛けられるベンチやタオルウォーマーを設え、身体を労わる動線を丁寧に整えています。大きな開口からは緑を望み、室内にいながら自然と呼吸が合っていきます。
安心と歓び、その両方を穏やかに受け止めるこの別荘は、時間をかけて使い続けることで完成していく住まいといえます。人を招き、自然に身を委ね、静かに寛ぐ。その積み重ねが、この場所の価値を育てていくのです。
Photo:Nacasa & Partners