プロの住宅レシピ Dachaという居場所──畑に寄り添う牛久の菜園ハウス

タジェール
中村 雅子

スウェーデンブルーとホワイトで統一した外観。畑に寄り添う菜園ハウスとして、周囲の風景に溶け込みながらも、暮らしの拠点としての輪郭をやさしく示している。

畑作業の合間に料理や休憩ができるダイニング・キッチン。北欧を思わせる色合いと木の床が、日常の延長として自然に身体を受け止める空間をつくる。

和室越しに広がるLDKとロフト。鴨居や建具を浮かせた納まりにより、コンパクトながら視線と空気が抜け、空間に奥行きが生まれている。

外国人の来客も迎えられる和室。和紙の建具、提灯照明、文机を設え、日本的な落ち着きと北欧的な軽やかさが共存する居場所として整えられている。

北欧を意識した柄の床材を用いたトイレ空間。掃除のしやすさやコストにも配慮しつつ、間接照明の柔らかな光で閉鎖感を抑えている。小さな場所にも、心地よさを積み重ねた設え。

茨城県牛久市。自宅から車で5分ほどの距離に建つこの小さな建物は、日常から少しだけ離れて過ごすための菜園ハウスです。

畑作業の合間に料理をし、休憩し、ときには娘家族も泊まれる。別荘というほど遠くなく、かといって完全な生活の場でもない──「外にもうひとつの居場所を持つ」という発想からこの住まいは生まれました。

建物のテーマとなったのは北欧の(Dacha)文化。冬が厳しい土地で、短い夏を最大限に楽しみながら野菜を育て暮らすための小屋です。

スウェーデン育ちの娘さんのご主人と、留学経験のある娘さんが親しんできた文化を背景に、外観・内観ともにスウェーデンブルーとホワイトで統一。畑の緑にやさしく馴染みながら、どこか異国の空気を漂わせています。

内部はコンパクトながら、1階に庭室、2階にロフトを備えた構成。畑で採れた野菜を持ち込み、そのまま調理できるダイニング・キッチンは、作業と休息を切り替える拠点となります。天井の高い空間にはシーリングファンを設え、空気を循環させることで、小さな建物でも快適性を確保しています。

外国人の来客が多いことから、和室も計画されました。和紙の建具や提灯照明、文机を置いた空間は、日本的な落ち着きを保ちながら上質な空間に仕上げています。

鴨居や押入れを浮かせた納まりにより足元に余白が生まれ、視線も軽やかに抜けていきます。限られた面積の中で、空間をどう軽く、豊かに使うかが丁寧に考えられています。

ロフト壁面に設けた丸窓もこの家を象徴する要素のひとつです。防火規定という条件から生まれたかたちですが、圧迫感を避けるために選ばれた円形が、結果として遊び心ある表情をつくり出しました。必要に迫られた条件を、そのままデザインへと昇華する設計の姿勢が、随所に現れています。

畑とともにあるこの小さな家は機能や効率を超えて、暮らしのリズムを整える場所。自然の恵みを受け取り、手を動かし、静かに過ごす ── その積み重ねが、ここでの時間を豊かなものにしていきます。

Photo:Nacasa & Partners

シェアする

採用されている製品

タジェール
中村 雅子

他の家づくりのアイデア

プロの住宅レシピ カテゴリ