プロの住宅レシピ アンティークが息づく家──集め続けた美意識を住まいに編み直す
木造2階建ての増築リノベーションをしたこの住まいは、機能改善と同時に、お施主さんが長年集めてきたアンティーク家具や照明、窓を活かしたいという強いご要望がありました。
どこに使うかを決めて買うのではなく、心が動いたものを集めてきたコレクション。それらを単に配置するのではなく、空間の骨格から組み直すことで再編集しています。
キッチンは既存を生かしながら補修・メンテナンスを施しました。レンガ壁や木製キャビネットの重厚な質感はそのままに、持ち込みの照明や収納を重ね、時間の層を感じさせる場へと昇華。
もとは窓を開ければ外部だった開口部の前には、新たに増築された階段空間が広がり、室内にいながら外部の気配を感じる構成へと変化しています。外開き窓の採用も、空間に陰影と奥行きをもたらす要素です。
リビングからロフトへ上がる階段には、施主所有の階段状収納家具を転用しました。スペースに余裕がない中で構造的に補強を施して手すりを新たに造作。上部には金色を塗布してインテリアの象徴的存在として際立たせています。
増築後の旧階段スペースは約2畳の書斎へと転換されました。緑色の壁に包まれた小空間にアンティークデスクを据え、壁をくり抜いて階段下の光を取り込む構成。移動のための場所だった空間が、思考のための場へと意味を変えています。
玄関は黒い大判塩ビタイルで引き締め、外部から内部へと世界観を切り替える場に。増築された階段へと自然につながる動線の中で、素材のコントラストが印象を強めます。
さらに、室内用のアンティーク半円窓はそのまま外部に使うのではなく、外側に一回り大きい窓を設ける二重構成としました。室内では半円の意匠を楽しみつつ、外部側では納まりと防水性を確保。光が差し込むことで壁との境界を曖昧にして違和感を感じさせません。
真っ白な空間を避け、色見本を一つずつ確認しながら選定した塗装色が、それらを受け止める背景となります。集めることから始まった美意識は、建築という器を得て一つの風景として結実しました。
Photo:湯原慎一郎