プロの住宅レシピ 玄関のない家
三木 達郎・本橋 良介
「玄関のない家」と聞くと一体どういうことか、と思われるかと思います。『ミキハウス』では、いかにも玄関という空間ではなく大きな窓の一つとして玄関を存在させることにしました。
断熱土間引き戸という鍵のかかる引き違いのガラス戸を採用しています。この家は、1階部分がアトリエとしての機能を兼ねており、プライベート空間として外から過剰に切り離す必要はないと考えました。また玄関の場所自体も、道に面しては作らず、敷地の真ん中から建物にアプローチできるので、道から丸見えというわけではありません。イメージとしては縁側から家に入るような形になります。一般的に玄関と言うと、どうしても狭く閉じていて、他の用途のない空間になりがちです。この家ではそのような場にしたくないと考えました。物と人の動きは連動するので、用途が固定される空間を作ると、そこに暮らす人の生活もそれに合わせて固定化されてしまいます。私たちは住まい手の生活の変化にも対応できるように、なるべく空間を自由に開けたものにし、その分光や風などの環境的な要素を感じられる家を創りたいと考えています。
今回の工夫は少し思い切りのいるものですが、このように玄関も窓の一つと捉えることで外との繋がりがより感じられる空間を作ることも可能です。
PHOTO:中山保寛