プロの住宅レシピ 雪国の暮らしを快適にする小さな建具
狩野一貴
写真1,2枚目の左側の白い壁の上の方にある小さな建具(引き戸)が今回ご紹介する工夫です。
『荻布の家』は富山県の住宅です。この地域は雪が多く降り、寒冷でもあるため気温や降雪対策を考えて設計する必要があります。開放的な住宅というのは気持ちの良いものですが、地域によってはその開放性ゆえに冬場は寒くなってしまいます。そこでこの住宅では吹き抜けで上下階をつなぐような設計にはせず、階段室とLDKを分けて、部屋の体積が小さめの早く暖まり易い作りにしています。
そしてその中で、活躍しているのがこの小さな建具です。実はこの建具を開けると、その向こうは階段室の上部空間です。冬などの寒い時期には閉めて暖気を逃さず、春秋などの中間期は建具を開けることでリビングと階段室(ここにも窓あり)に風が流れて快適です。さらに階段室側の窓明かりもこの引き戸を開けることでリビングに届き、空間につながりが生まれます。
どこもかしこも開放的に、というのではなく、気候、風土にあった家づくりを行うことが快適な暮らしには重要と考えています。
PHOTO:dot DUCK株式会社 内山昭一