プロの住宅レシピ 木のトラス構造が美しいリビング
阿曽 芙実
鉄橋や大きな建物でよく目にするトラス構造。三角形を組み合わせて作る構造は強固な強度を持ちます。
この住宅では、大きな梁の代わりにトラス構造を取り入れ、繊細で美しい空間を生み出しています。
この住宅はシンプルな長方形ですが、空間を45度に傾けて間仕切ることで、住宅に長さを作り、奥行きを出しています。同様に梁も斜めに配置し、約8.2mもの距離を柱を使わず屋根を支えています。通常、木造の梁をこの距離に配置すると、梁の幅が広がり、空間に重たい印象を与えてしまいます。そこで、トラス構造を採用することで、梁の印象を軽減し、全体の空間をより軽やかに演出しました。
トラス構造は、6×3cmの間伐材(森林を保護するために一部の樹木を間引く作業の過程で出てきた木材)で作ることができ、わざわざ大きな木を伐採する必要もないので環境にも配慮できます。
デザインにおいては、どの角度からでも美しい構造が広がるよう設計されています。
特に、窓際やキッチンでは、トラス構造を低い位置に配置することで、こもり感のある空間を演出しています。一方で、リビングの中心部ではトラス構造に抜けをつくり、広がりを感じさせています。同じリビングでも、構造の配置やデザインによって空間の印象が変わり、それぞれ異なる居場所を作り出しています。
Photo :Shigeo Ogawa