プロの住宅レシピ 譲れない希望をかなえたすべり台のある家
大塚達也・湊谷みち代
私たちは、施主の方の暮らしへの希望を聞いて、たとえ条件的には難しいことだとしても、プラスに転換しておもしろいものにしたいと考えています。
その中でも、試行錯誤が必要だったのがこの『すらいどハウス』です。
「家の中にすべり台が欲しい」という要望を最初に聞いたときは、スペースなどの条件からかなり難しいと思いました。
通常、階段が1つあるだけでも、家全体のプランに大きな影響があります。すべり台も加えるとなると、面積や構造的に全体が制御されてしまいます。あまりやりたくないな、というのが最初の正直な気持ちでした。
お子さんもいずれ大きくなるから必要ないのでは、と思いながらよくよくお話を聞いてみると、すべり台が欲しいのは奥様だったのです。それを聞いて、これが家づくりの夢であるのならば何とかしてつくろうと思いました。
そこからは公園で、滑りやすさ、角度、安全性を検証したり、適切な角度で2階と1階をつないでもすべり台に必要な距離が長くなりすぎないように、1階に楽しめる小上がり空間(ブックヌック)を設計するなど工夫を重ねました。
ブックヌックの床下部分や、すべり台の距離を調整する目的もある段差には収納も設け、すべり台が家全体になじんだプランとなるよう設計しました。