プロの住宅レシピ 素材の切り替えで生み出す心地よい居場所
奥和田健
自分の『居場所』というと、壁や建具で仕切られた『部屋』のこと、と思われる方も多いです。しかし、実はこの2つは別のものです。
家族や単身で暮らす場合には、心地よい居場所づくりに壁や建具といった空間を途切れさせるものは必ずしも多く必要ではありません。
『十七月の住居』は、壁や建具を極力減らし、全体を大きな一つの空間として構築しました。その中で床や天井の素材使いに変化をつけることで、緩やかにエリアを分けた住まいです。
フローリングとコンクリートスラブというように床の素材を切り替えたり、天井もエリアの境目でシナ合板に切り替えることにより、壁で区切らなくとも空間の役割が変わったことが感じられ、ここまではキッチン、ここまでは廊下、ここまでは自分の居室と認識できます。これが、全て同じ素材だと、どこまでがそれぞれのテリトリーかがわからなくなり、なんだか落ち着かない、居場所がない、という感覚になってしまいます。
このように、暮らす中で自然に感じとれるような素材の変化を仕掛けることで、住空間を細かく分断させずに心地よい居場所を生み出すことも可能です。
PHOTO: 山田圭司郎 YFT