プロの住宅レシピ 変動自在な「木の箱」が生む、柔軟なリビング空間
荒谷 省午
終の住処として計画した住まいは、最小限の機能だけを残すシンプルな住まいとしました。
1階は玄関から大きなワンルームの土間リビングが広がります。この空間には、自由に動かせる木の箱を2つ設置。固定する金具のロックを解除すれば、手で押して簡単にゴロゴロと動かすことができ、自由に配置が変えられます。1つはクローゼットとして、もう1つはキッチン収納として使われています。この柔軟な設計により、土間リビングは多目的に活用でき、住む時々の生活スタイルに合わせて自在に変化させることができます。
また、道路が隣接するため光の取り入れ方にも気を配りました。窓は上部と足元にのみ設けることで外からの視線を遮ります。そして吹き抜けを設けることで、吹き抜けを介して光が落ちるため、室内は一定の明るさを保ちます。さらに、玄関と土間リビングの間には木製の建具を設置し、外側と内側の曖昧な中間領域を作りました。道路と住居空間の間にワンクッション置くことで、心理的にも安心感が生まれます。
老後の生活も考慮した設計で、玄関から一続きの土間リビングはバリアフリーにも対応します。
動く木の箱という自由で柔軟な設計が、これからの生活の変化を支えてくれます。
Photo : Shigeo Ogawa