プロの住宅レシピ 街並みと住まいへの願いを込めたファサード(外観)
小川貴之
住まいも街並みも美しくありたい、それが私の設計の原点です。
首都圏の典型的な中層住宅街は斜線制限(道路の圧迫感低減や隣地の採光や通風を確保するために建物の高さ、範囲を規制すること)によって似たような勾配屋根の建物が並んでいます。
また、小さな土地が多く、室外機、配管、電気メーターなどが行き場なく道路側に表出し、緑化スペースもあまり取れない、というのが実情です。この街並みの課題に向き合った作品が自宅兼事務所の『VALE(ベイル)』です。
一つの住宅で街並みを変えることはできません。しかし、これから家を建てようと思う人たちの意識に働きかけることはできると信じて設計を行いました。
検討段階では、環境や法律、コストなど様々な条件を考えながら、30個以上の模型をつくりました。諸条件をクリアしつつ画一的ではないプランを模索して、最終的には、斜めに大きく切り開かれた外壁を持つミニマルな外観の建物になりました。水平な屋根に、余計な付属物のないすっきりとした壁面、建物の合間から覗く緑など、長く住み続けるこの地域の住宅はこうあってほしい、という願いを自分なりに表現できたと思っています。
皆さんも、こんな家にしたい、叶えたい、と自分なりの願いを考えることから始めてみてはいかがでしょうか。
PHOTO:太田拓実