■ イヌとネコとヒトの家
これまで犬や猫それぞれの共生住宅の設計に携わり 経験や自分たちなりの解法のようなものは得ていたが、この計画では犬と猫の両方と人が共生していくための住宅であるため 関係を再検討する必要があった。どちらも人気のペットであり それぞれの多頭飼いも珍しくはなく 本件のような異種多頭飼いもこれからさらに増えていくことだろう。この計画では習性が大きく異なる部分を持つペット達が 人と心地よく暮らしていくための提案となるとともに、ペットたちの習性を生かして行動を観察することを楽しめるような住宅の設計を目指している。
家族構成は
父、娘夫婦、犬1匹、猫3匹(保護犬、保護猫を含む)
元々立川のマンションで暮らしていた夫婦だが、ペットたちと伸び伸び暮らせる ここあきる野市に移住を決意した。ペットと遊べるレジャー施設やドッグランまで車を使えばそうかからず、近くには川が流れ散歩の途中にも山々を間近に感じることが出来る環境である。
一方、駅周辺は買い物にも便利で、整備された並木道も美しい。敷地は駅付近から連なる住宅地の端に位置し街と自然の両方の恩恵を得ることが出来る。
建物は諸室の間にコートを配したコートハウス型の低層下屋の中央に2階建ての箱が挿入されたような形態となっている。
冒頭でも述べたとおり設計に取り掛かるにあたって、縦方向に立体的に移動する猫と平面的に動く犬の特徴的な習性をペット達を愛する建主が観察して楽しむ家にしたいと考え、共用部分や執務室など一日の多くを過ごす場所でそれが叶うようにした。イメージしたのは犬が走り回れるような広いスペースに木箱が何段も高く積み上げられそこを猫たちが上り下りするといったもの。1階がL・D・Kで2階が在宅ワークが行え来客時はゲストルームになる多目的スペース、これをつなぐ吹抜は、このイメージを元に考えられ壁面には多くの箱が設けられキャットウォークとなっている。階段を上ることで人から猫の目線に近づくこともできる。
中央の共用スペースを介して父室と娘夫婦のエリアが接続している。
外から玄関へは門扉のあるコートを経てアプローチするようになっており、これはペットの飛び出し対策となっている。またここには犬の足洗い場があり毎日の散歩の後のケアを雨風にさらされることなく行えるようにした。
バックヤードは玄関を介さず直接コートから出入りでき、キッチンにも浴室にも父室にも接続しているため導線上、重要な役割を果たしている。
構造:木造地上2階
家族構成:夫婦+父+犬+猫x3
構造設計:羽田野構造設計室 羽田野 裕二
撮影:稲継 泰介/ジャムズ