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■ 紅葉が丘の家

都市住宅密集地であっても、力強いシンプルな形に屋根と窓を美しく納めて、凛とした佇まいになることを目指しました。

多雨を受け流す6寸勾配のしっかりとした屋根勾配、夏季の日射を遮蔽する軒の出や植栽は、気候風土に適応した自然な形であり、耐久性を高くします。自然の恵みを活かすべく、通風性や冬季の陽射しの採りこみに配慮した窓配置などにもこだわっており、省エネルギーに貢献します。

内部の特徴は、日本伝統の木造技術や木の美しさを、住まいの各所に現れるように配慮したことです。構造としての木組みを素直に現しながら、それぞれの部屋に異なる空間が楽しめるようにデザインしました。歩みを進めるごとに力強い空間や上昇性のある空間、遊びのある空間など、多彩に木造り空間・木架構が展開します。木の元来の香りや成分を活かせるよう、乾燥方法にもこだわったものを採用しています。さらに棟梁の動く木材への深い造詣、ピッタリと組まれた部材、時間の流れにも耐える技法と納まりも、住まいを魅せるように配慮。ディテールと伝統木造建築の技術は木組み空間と混然一体となって、住まいに深みを醸し出しています。

■ 都心の自然を感じる。ミニマルでシンプルな住まい

住み手の要望は、「シンプルでミニマルな住まいに」。
そこで、可能な限り無駄を削ぎ落とすことで現れる美しい空間を目指しました。

ダイニングキッチンはたっぷりとした収納と充分な広さに加え、回遊性のある動線によって、機能性に配慮。スマートな設備や住み手に合わせた高さのアイランドキッチンとカップボードを制作し、使い心地を向上させています。ダイニングキッチンからスキップフロアを介して、東へ目を向ければ、森のような環境が広がります。
素材やカラーは温かみのある木を活かしつつ、モダンな雰囲気に。シンプルな美しさを求めて継ぎ目などのラインもできるだけなくすディテールにし、金物・器具等はシンプルで質の良いものを追及しました。
瀟酒な住宅街と緑豊かな自然という魅力的な2つの外部環境も、東西対称のバルコニーと窓を通じて楽しめます。急勾配の屋根もうまく活かすことで、天井の高い書斎を実現しました。
お手頃ながらも機能性とデザイン性に優れた既製品は、計画的に取り入れたことで住まいの世界観に見事に調和しています。

時間によってさまざまな表情を生みだすブラインドは、都心にいながらも千差万別に変化する自然を感じることができます。シンプルな内部空間が外の豊かな自然環境を際立たせる、洗練されたミニマルな空間が完成しました。
PHOTO：大崎 晶子／杉本 龍彦