■ マルハウス
「ちりめん街道」を代表とした伝統建築物が残る京都府与謝郡に建つ、夫婦と子供3人のための住宅。
計画地は周辺地域の方が利用されていた教会跡地であり、住宅メーカーによる新しい建物と昔ながらの瓦屋根の日本家屋が混在した場所となる。周囲は将来的に住宅が立ち並ぶことが想定された為、敷地の記憶をたどり周辺に対して逸脱しないスケールとなるよう計画をした。
計画として、周囲の伝統建築物のボリュームを参照して、大屋根は平入り切妻型とし、積雪が多い地域となることから半屋外の土間が平入り片流れ型のボリュームで取り付く形状としている。大屋根を支える2層分の架構(地場産材の桧・杉材を使用)の下に設けられたウッドデッキスペースは縁側のように中間領域として「内と外」「家族と地域」など様々な関係を結ぶ居場所を目指した。
内部空間は一続きの空間としながらも、「ズレ」によって空間を知覚として多様に享受できないかと考えた。段差による「断面のズレ」は視線の変化とたまりしろをつくり、ゾーニングによって生まれた「軸線のズレ」は室同士の関係に連続性をもたせ、「動線のズレ」によって一筆書きの動線に離れた場所同士が一瞬だけつながるような距離感を設えた。軸線と動線を交差させながら狭めたり広げたり、方向性をつけることで空間の多様性を意図した。
また随所に1:1、1:3、1:√2、1:√3といった普遍的な比例を用いることで、単純な比がもたらす秩序を空間に与えるよう構成している。
小さな家であるがゆえに動線を分断せずに滑らかに続くようにし、家族の中に「新たな間合い」を与え、多様な生活の場とのつながりが生まれることを望んでいる。
PHOTO:amu photograph 吉田祥平